34 「この部屋で50時間過ごしてもらえば先に進めるドアが開く ので待っていたまえ」 リッポーがアナウンスを流し、マイクの電源を落とした。 「開始から10時間たって、受験者も残り32名。 うち合格者はヒソカ・ギタラクル・ハンゾーの3名」 先ほどのスプラッタな光景を忘れ、薄く笑みを浮かべながら はゴン達の道でないモニターに目線を移す。 さーて、後何人がこの試験合格するかな。 その頃、ゴン達多数決の道チームは? 「ねえクラピカ。クラピカはのことあんなに知ってたし、 ジンってハンターも知らないかな?」 待つように言われた部屋には沢山の本があり、テレビも 設置されている。 ゴンも最初は本に目を通していたが、飽きてしまったので前々 から聞こうと思っていた事を聞いてみた。 「ジン……すまない。私では思いつかないな」 クラピカは何度かその名前を口に乗せ、考えてみたが答え になるような知識はなかった。 「つーかクラピカじゃなくてもミッシングハンター のって言えば大概の奴は知ってるもんだろ」 キルアの呆れの篭った声にゴンは振り返った。 「え?そんなにって有名人なの?」 レオリオはゴンの質問に力強く頷いた。 「そりゃそうだろ。ここ数年じゃ一番活躍してるハンターだ。 野球チーム買った理由が"自分が練習に参加する為"って 公言してるのも変わってるしな」 ゴンは野球がどういうものなのかよく分からないが、 はその野球というのが好きだとは分かった。 「は世間ではハンターの良心とか言われてるが、 その反面黒い噂もそれなりにあるぜ。 マフィアと繋がりがあるのは事実だろうな。 じゃなきゃあんな広範囲で深い情報を仕入れられる訳がねえ」 トンパの話に首を捻るゴンを見かねて、クラピカが ひとつ咳払いをした。 「の功績は大別すると3つに分けられる。 1つ目は野生生物の保護。 ファルシラウサギや密猟者捕縛がこれに類する。 2つ目は野球もしくはベースボールと言う球技のプロチーム "ブラックパンサー"オーナーであること。 野球人気の低迷を盛り上げ直したのがこのチームが先頭だ。 3つ目は新薬や医療法の新案や従来の方法の見直し。 ヨルビアン大陸で発生した公害の解決が主となっている。 これらの功績は華々しいが、早期解決にこだわり過ぎ、 事後影響の軽視ではないかと非難を受けているが、 その反面人命と道徳優先の姿勢は素晴らしいと多くの人に 評価されてもいる」 「医者の卵として意見すりゃ、の解決した公害病、 名前はヘンパル脳炎って言われてるんだが、これの 解決の早さと目の付け所の奇抜さは郡を抜いてるぜ」 「確かワクチンになった抗生物質の発見元はウミワニの一種 から採取したのだったな」 「「ワニ!?」」 クラピカから出た単語にゴンとキルアが声を裏返して 大きく反応した。 「ワニの血液には生体内で作られる抗生物質が循環している事から ほとんど無菌状態だ。部位によっては生でも食べる事ができる」 ※ちなみに低カロリーで不味くはないそうです。 「原因となった工場のあるヘンパル海域にヘンパルワニという 海水、淡水どちらでも生存できる体長7mのワニが生息している。 魚などの水中生態系が大打撃は受けているものの、壊滅しないのは 何故だろうと考えていたところ、丁度ワニが元気に泳いでいた。 可笑しいと思ったはワニを素手で捕らえたという」 「体長7mっての3倍以上だよな」 「しかも素手なの?」 キルアとゴンはどうにも信じられない様子である。 「無傷で捕獲するためと、書籍には書いてあった。 そして、そのワニからウイルスを沈静化させる抗生物質 の採取と培養に成功し、病気は解決の道を歩めた。 レオリオの言うとおり、多くの人命を優先したの行動は必要 なだったのだろう」 クラピカは一息ついて紅茶を口に含んだ。 今度はレオリオが得意分野を生かして 熱く語ってくれているが、専門語が含まれるそれに ゴンとキルアは半分も理解できなかった。 「世界中の医学者は誰もワニの血にそんな抗生物質が あることを知らなかった。 感染症と思われてた病気の解決・私財を投げ打って の治療行為なんてセンセーショナルな名誉、 実は俺、きっと狙ってやってやってると思ってたぜ」 「さり気に酷いこと言ってんなオッサン」 「オッサン言うな!それに今は違げーよ!! それは兎も角!俺が言いたかったのは人は噂で判断しちゃ いかんということだ!!」 「その説教口調がもっとオッサン臭いんだよ」 「も〜2人とも喧嘩しちゃ駄目だよ」 それから話はとは関係ない方向へと進んでいったが、 ゴンの胸の中に父とカイト以外にもう1人の尊敬できる ハンターが刻まれた。 ※ ワニの血に抗生物質が循環しているのは本当です。 ただ今エイズの治療に使用できないかと研究中だそうです。