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「こいつが本当に気絶してるかどうか賭けようぜ」

帰ってきてモニターを見るとレオリオがマジタニを挟んで
試験官のレルートと対峙していた。
ふーん、レオリオらしさが戻ってきたのね。

「ただ今戻りました。他の受験者にも食料は配布してきましたよ」

「それぐらい死刑囚にやらせればよかったんだが、
ご苦労さまと言っておくよ」

出すぎたマネなのは確かだけどね。
どうせ試験合格者はしばらく付き合いがあるん
だから顔見せしておいて損はない。

そんな思考に流されながら長めている多数決
メンバーは中々面白い展開である。

レオリオは眼球運動で狸寝入りを見抜き、2勝してリーチ。
レルートが顔を見せて自分が男か女かと問うた。

「レオリオの奴…男に賭けるな」
「うん」「え?」

クラピカとキルアの共通意見の根拠に
気づけないゴンに癒される。
が、レルート…捕まえた時も思ったけど、
女をそこまで武器にできるとはいっそ天晴れ。

私にゃそんな誇れる体してないし、上手に甘える
のも苦手だし…まず無理だね。

幼い頃から野球をして、手は白魚のようななんて
形容詞はお世辞にもつかえない、ごつごつしたもの。

顔にこそ傷はないが、服を剥いでみれば、他と肌の色が
異なっていて目立つ傷跡がいくつかある。

鍛えたお陰で太ももや二の腕も太いし、自分で自分の体
を見て、恋人のカイトに申し訳なくなることもしばしばだ。

でも、強さを求めるには仕方のない残り物でもあるし、
後悔はしていないので解決策なんて考えようともしていない。

「せめてもう少し愛嬌が出来れば…」
【急に愚痴愚痴どうした】
「いや、こっちの話」

ため息を吐いたにサンテラが声をかけるが、は
それを一蹴した。

これで多数決メンバーの持ち点を10時間にまで下げさせる。
今度は親のレオリオは苦し紛れにジャンケンという単純で
運の要素が強い勝負に出た。

ここで、レオリオの敗北は決定した。

「レオリオには相性の悪い相手だったね」

「相性も何も普通レルートに口で勝てる奴はそうはいないぞ」
「普通ではやってけない商売だからこそ、こんな試験を
しているんでしょう?」

そこで、アップにされた画面にはパーとグーの手が映されていた。

「ジャンケン勝負決着!!チップ切れによってレオリオの負け!!」


これで2勝2敗。

運命は残るキルアにかかっている。







「このチームはここで終わりだな。次の相手は
あの解体屋ジョネスだ」

リッポーはポリポリ音をさせて柿の種のピーナッツを食べる。

解体屋(バラシや)ジョネスか…。

ザバン市で150人近い殺人を犯した犯罪者。
本来は即刻死刑に処されるべきだろうが、ザバン市は死刑
のない都市。

だからこいつが最も長い懲役を得ているのだろう。

ただ……キルアには敵う訳がない。

ゾルディックの家の子なら、それこそ4桁近い人の命を
この年で奪っているはずだから。



そう、この光景はあの子にとって日常なのだ。



【心臓を抉り出すとは…確実な殺しの技術じゃのう】

珊底羅の素直な意見には感情は篭っていない。

ピクピクひくつく心臓は医学関連研究所で見たどの
ホルマリン漬けのそれよりも生々しい。

キルアの鋭利になった爪によって握りつぶされて、
ジョネスは思い出したようにその場に崩れた。

「あれは、一体何者なんだ?」

「キルア=ゾルディック。暗殺一家当主の三男ですよ」

人一人殺しても平然としているキルアは誰から見ても異様だ。

「さてこれで3勝2敗。これでここはもうパスだろ?」
「…ああ、君達の勝ちだ。ここを通り過ぎると小さな部屋がある。
そこで負け分の時間、50時間をすごしていただこう」

キルアの確認にベンドットが答えた。

「そうか…ところでオッサン何もしてないから物足りない
だろ?俺と遊ばない?」

キルアこそが物足りないのだろう。

その誘いにベンドットは額に冷や汗を流しながら否と答えた。

「やめておく」