#10
先ほどまで居間として使用していた部屋を階段で上がり、
比較的綺麗な部屋に空気で膨らますキングサイズの
簡易ベットがおいてあった。
はスーツの上着とズボンを脱ぎ、シャツの一部丈のスパッツになり、
寝る準備をしながら、女同士の会話に花を咲かせている。
「ふーん、それじゃは初体験もまだで、ディープキスの
経験もないんだ。道理であんなウブな反応してたんだね」
「だってこの間16になったばかりだし、恋とか恋愛とか
してる暇も心の余裕もなかったんだもん」
マチの明け透けな台詞にはおずおずとそう反論した。
「暇と余裕がないって、イイ所のお嬢さんなのに?
何かあったの?」
パクノダがの肩に手をかけてそう聞いた。
「ちょっとね、15からは1人暮らしなの」
はどことなく寂しそうで、憂いを帯びた
眼をパクノダとマチに見せた。
数時間後、はうとうとと眠りについていた。
一応警戒して浅い眠りであるようであるが、
それでも敵陣で睡眠をとるという豪胆さには呆れと
一緒に感心もしてしまう。
この状態だけで判断すれば長期戦は確実。
それを考えれば思い切って休息をとる事が大事だ。
それを知って、このように眠りについているのだろう。
「パク、どうだった?」
「どうと言われても、信じられない気持ちでいっぱいよ」
パクノダはふぅと小さくため息を吐いた。
「は、この世界で生を受けた者じゃないわ」
一番先に見えたのは、義兄と呼ぶ赤髪と金髪の少年。
それに、ベースボールユニフォームをまとった
自身と、仲間達。
「記憶のは義兄と同じ緑の目だった。身体能力も
悪くはないみたいだったけど、今よりもずっと一般人
に近かったわね」
次は、暗い闇しかない空間。
狂いそうなほど、静かで、何もない場所で
ずっと家族と仲間達を思い浮かべて耐えていた。
その記憶を見ただけの私まで引きずられてしまいそうな、
闇と孤独がの中で渦巻いていた。
「苦労を知らないなんて嘘でも言えないわ。
1人きりに耐えて、知らないことだらけの世界で今まで生き残って
…それでも、いえ、だからこそ昔を、故郷を忘れられない。
帰れるかどうかも分からない。この世界にいてもいいのかわからない。
板ばさみにも程があるわ」
あどけない、穏やかに眠る少女。
こう見ているだけでも穏やかに微笑める自分がいる。
「可笑しな子よ。私達とは正反対の生活を送って、
嫌悪する方が自然なのに、それでも存在を受け入れ
ているわ。私達も、団長すらも」
存在を否定すれば、心が楽になるのに。
それでも、は人として旅団を認識している。
そして、たったの数時間で私も、この子を受け入れてしまっている。
残虐で通っている自分達を認めるのは、普通無茶な話なのに。
そして、仲間以外はどうでもいい自分にここまで入り込めている。
「団長が興味を持って当たり前ね。女の私でも愛しく
思ってしまうもの」
「それは分かる。まだシャルとか団長ならまだいいけど、
絶対ヒソカには盗られたくないわね。見たら気に入る
わよ、あいつ」
マチはパクノダの気持ちに大いに賛同し、
パクノダのマチの意見に大いに賛同した。
「ここは同性であること十分に活用しましょう」
「そうね」
共同戦線がここに成り立った。
これがにとって有益なのか無益なのか。
少なくとも、有害にはならないだろう。
