#08
「ふぃ〜気持ちよかった」
体からまだ湯気が立っているが、はほくほくで
マチと元来た道を歩いている。
「仮アジトで風呂付はそうそうないから運いいよ」
「やっぱりここは仮なんだ」
道理で物が少ないと思った。
そう納得しながら長めの前髪を払って周りを見回した。
「そういえば、の目は金なんだ。珍しいね」
「うん。私以外ではあんまりいないと思う」
琥珀に似た金目。吸い込まれるというより、引き込まれる。
そんな色をしている。
「前にクルタっていう民族の赤い目狙ったけど、
の目にはそれと張るね」
「…比べられても気分微妙なんだけど」
確か大量虐殺したんだよね、旅団が。
しかも滅亡したはずだよね!?
目を抉られるの普通に嫌だよ!
が動くたびにジャラジャラ鳴る鎖。
生活に支障はない長さはあるが、邪魔だな〜。
「マチ、これってちぎっちゃ駄目かな?」
今の私なら出来ると確信を持ってはそう訪ねた。
「駄目だろうね。念加わってるのは確かだから」
変な風に身の上にかかってきたら更に面倒になると
匂わせられ、は疲れたため息を吐いてしまう。
+*+*+*
「お、戻ってきたぜ」
「夕飯盗ってきたけど、牛丼、豚丼、鳥飯どれがいい?」
フィンクスと呼ばれていた眉なしジャージ男と
一つ目小僧が大量のポリ袋と弁当を持っていた。
「とってきたが、盗ってきたなあたり盗賊らしいね」
「金払うよりずっと楽。アタシは鳥にするけどどうする?」
「私も鳥がいい」
「ほらよ。変なもん入ってねえのは保障してやる」
「どうも」
う〜ん、どうしよ。私ってこの人たち捕まえる立場
なんだけど、あんまし憎めないな。
すっごい心配っつーか同情されてるし。
「そういえば何でがあそこにいたのさ」
牛丼を食べながらシャルがに聞いてきた。
「ルルカ文字の文体形態とその解読法についての発表してたのよ。
私って元々は運び屋だったんだけど、古文板の搬送作業受けた時
に現存してる言語と似てる所に気づいて、そのまま手伝いしてたの」
は割り箸をとり、ウーロン茶の入った紙コップを受け取った。
「へえ、もう成果出しちゃったってことか。流石だね」
「どうして流石なのかよくわかんけいけど、ありがと」
鶏肉を剥ぎ取り、汁の染み渡ったご飯を口に入れた。
うな重とかもそうだけど、ウナギや鳥よりもこの汁を
染み込ませたご飯の方が私は好きだったりする。
「美味しそうに食べるわね」
どこか小動物のほんわかさを感じてしまったパク
はついつい声に出してしまった。
「ご飯はありがたくいただくのが死んでくれた食物への礼儀よ」
ごちそうさまでしたと手を合わせる。
「って結構良いとこのお嬢様だったりした?」
「お、それ俺も思ったぜ」
マチの質問にノブナガが乗ってきた。
「変に礼儀正しいっつーか、擦れてないっつーか」
フィンクスもそれに賛同を示す。
礼儀作法から武術の型まで。
全てにおいて洗練されたものがあるのを彼らは気づいていた。
「そうだね、食うに困ったのは修行中に山登ったときくらいだったし。
世界水準よりずっと上な自覚はある。
死線をくぐった回数も貴方達に負けるのは確実ね」
生まれた世界で死ぬ目にあったのは両手の指で足りる。
こっちに来てからは爆発的に増えてもクロロ、フェイタン、
フィンクス、マチ、フランクリン、シャルナークの戦闘で
対峙した人から感じた感覚は私よりも死が近い位置に
あるようだった。
「だから、マチが言ったように足手まといになる人は
違う場所に強制的に送ったんだよ。私は、誰かを守り
ながら戦えるほど強くないのを重々承知してるから」
自分をそう語るを、旅団は先ほどとはまた違った
目で見ていた。
自分の非力を知る。
それが出来る者から強くなる。
それを経験上知る彼らだからこそ、の精神的な
強さを垣間見れた。
