1次試験






私たちが入ってきた階段から試験官と思われる人物が降りてきた。

日本人顔の黒縁眼鏡でスーツの男性。

オーラの流れからいってまず間違いなく念能力は習得済み。


「ここにいる人数で受け付けを終了します。
私は第一次試験官ノヴと言います」


ピンと張りつめた緊張が空間を支配した。

玄人であるからこその空間の流れ。

試験官のノヴの次の言葉を待った。


「それにしても合計40名とは少ないですね。
偶数なのは幸いでしたが」


偶数で幸い?


「では第一試験を始めますか。まずはペアを作ってもらいます。1番の人は
2番と、3番の人は4番といった具合に違いのペアを捜して下さい」


私は35番だから36番の人か…。

キョロキョロ回りを眺めて探してみる。

すると。


「ねえ君が35番?」


36番のプレートをつけた金髪の好青年が話しかけてくれた。


「そうです。貴方が36番ですか」

「うん。俺はシャルナーク」

「私はです」

「へえ、探し屋さんか」


本気で知ってる人多いなおい。

やっぱり闇の世界に片足突っこんだ人物が多いだけあるよ。


「どうやらまとまったみたいですね。ではそのペアで探しもの
をしてもらいます。探しものは全部で4つ」


ノヴは右手で4本指を立てた。


「探す場所はヨークシン全体。期間は明日の午後3時。
最後に探すモノは"鍵"です」


受験生はどよめきだった。


「ハンターらしく探しものテストか」


は他の受験生と比べて慌てた様子は見られない。

それは隣にいるシャルナークも同じだ。


「得手不得手が大きく分かれるね。がペアで良かった」

「それはどうも」


少なくとも足手まといにはならないだろうって言い回し。

そりゃ試験なんだから当たり前だけど。


「ハンター協会のマークが入っているのですぐに判りますよ。

それとその鍵は1つ1つ人に預けてあります。

最後にヒントを1つ。鍵も持っている人は私と共通点があります。

それでは、健闘を祈ります」


それだけ言ってノヴは階段を上がっていった。

それに続いて受験生は次々に階段を駆け上る。

そして最後にとシャルナークが部屋に残った。

「さて、まずはどうする?」

「シャルナークさんは念使えますか?」

「勿論。も使えるね?」


訪ね返されては軽く鼻で笑った。


「愚問です。おそらく"鍵"は念能力者に預けてあります」


の回答にシャルナークは安心するように頷いた。


「それは俺も同感。鍵は扉・箱など何かを開くために必要な
アイテム。ヨークシンでそれを表すものは?」


は階段に向かって歩き出し、シャルナークもそれに続く。


「私なら空港とかそういった交通の窓口を選びます。

ある程度人はわんさかいて紛れ込みやすいし」


暗闇の中で二人の足音と会話が混ざり合う。

スローペースで歩いている辺り、とシャルナークの
余裕さを良く表していると言えた。


「気が合うね、俺もそれに賛成。それと人の特徴はどう考える?」

「まず眼鏡とスーツは削除。人数多すぎて絞り込む意味がないですね」

「それに黒髪とか身体的特徴も削除対象だね。
そうやってハネていくと残るのは…」

「「動作の癖!」」


とシャルナークの声が合わさった。

「俺としてはずっとズボンのポケットに手を入れてる人かな」

「もしかしたら省いた眼鏡も関係するかもしれません。
あのノヴって人レンズに指紋つけるようにして眼鏡上げていました」

それは眼鏡をしてる人は絶対しない上げ方。

つまり演じた癖。


「それでもって念能力者とくればかなり絞れるよね。
まずは空港行ってみる?」

「そうしましょうか」


はシャルナークの提案に頷いた。

そこで教会に出た。

ステンドガラスの光がやはり綺麗だ。


「それと敬語使わないでいいから。

シャルナークって長いからシャルでいいよ」

「OKシャル」