レークス教会









幻影旅団の団長から逃げ出すと、私は迷わず目的地に足を向けた。

しばらく歩くと、真っ白な壁のゴシック様式の教会が見えてくる。

重厚な扉を開けると、ステンドガラスに反射して光るのが美しい講堂が垣間見れた。


「失礼します。フォーカス神父様はいらっしゃいますか?」

「私がフォーカスですよ、お嬢さん。ハンター試験受験者ですね」


真ん中の廊下の先に50代半ばほどの神父が立っていた。


「そうです。参列席の3列目の4番目の席ですね」

「情報がお早い事です。ではどうぞ」


ポチ

フォーカスがボタンを押すと。

グオオンン

という音がして3列目の4番目の席が地下への入り口となった。


「私は受験プレートの配布も行っております。
お嬢さんは35番になりますね。では、健闘をお祈りします」

「ありがとうございます」



プレートを受け取っては地下への階段を降りていく。


カツ 
  カツ 
    カツ


靴音が静かな暗闇の階段での唯一の音。

幾分も下っているとほのかな光が見えてきた。


段差が終わる。

カツン


私の靴音が広い空間に反響した。

数十人の私より先に来た受験生がそこにはたむろしていた。

その会場に掛け時計があって、通知の開始時間
30分前である事を確認できる。


「やあお嬢ちゃん、ハンター試験初挑戦かい?」


不意にでんぐりとした体型の中年男性に話しかけられた。


「ええ、貴方はもう幾度か経験が?」

なんてことはない、ただの新人落としかたかりか、
そんな所の人間だろう。


「ああ、10歳からこれまでずっとね」

「それはご苦労様です」


ほら、この人は試験に受かりたいんじゃない。

試験を楽しんでいる部類の人間。


「今年は人が少ないんですかね?」

「そうだな、例年だとこの時間なら平均300〜700人
くらいはいても可笑しくないんだが、今年は少ないな。

お嬢ちゃんラッキーかもしれないな。人数が少ないって事
はそれだけライバルも減るってことだ。あ、そういえば
まだ名乗ってなかったな。俺はトンパってんだ」

「私はです」

「っ探し屋の!?」

「よくご存じですね」


思ったより自分は有名らしかった。


「いや〜こりゃ有名人と仲良くなれたな。
あ、どうだ?お近づきの印に」

「すみません、お気持ちだけいただいておきます」


すまなそうに片手で謝罪の意を表しておく。

トンパはそれ以上無理強いすることなくジュースを仕舞った。


「そりゃ残念」


そうして私はトンパさんと他愛もない雑談で時間を潰した。

流石、何十回も試験を受けているだけあって知識も豊富
だから、気をつけて話してればなんて事無く付き合える。


ちゃん、実は俺が新人つぶしって気づいてるだろ?」

「ええ。そういったものでなければもっと早くに
試験自体諦めてるんじゃないですか?」


そう言ってみたらトンパはあっけにとられた表情をした。


「ははは、そりゃそうだ。ちゃんその何十回も受けてる俺が
保証してやるよ。アンタ誰よりもプロハンターに近いってな。

若いのに肝が据わりすぎてるぜ。大概の奴は俺の正体気づいたら
まず間違いなく距離を置く。俺の利用価値には気づかないでな」

ジリリリリリ


「おっと、試験開始か。俺はちゃんは潰さないでおくよ。頑張りな」

「ありがとうございます」


はにっこり笑ってトンパを見送った。

さーて、試験開始か。