クロロ=ルシルフル








が目を開けると廃屋にいた。

昨年の9月に訪れた廃れたビル。


金色で覆われた豪奢な青年、アニラはの反応を待つ。



【これでいいか?他にすべき事があるならする】


は横に首を振った。


「ううん、これで十分。ありがとうアニラ」


【お安いご用。いつでも呼べ。すぐに参上する】


「そうして。いつもご苦労様」


【ふ、主の為に我は存在できるのだ。では】


それだけ言ってアニラは姿を消した。

残ったのはだけ。


「さて、目的地はまずレークス教会だったわね」

「ハンター試験か?」

「…っ誰!?」


自分だけしかいないと思っていたのに自分でない声が混ざった。

壊れたドアを睨み付ける。

気配が、ない…絶、念能力者か。しかもかなり強い。

ヒュッ ガタッ

空気を斬る音がして、次にドアが真っ二つに切れた。


「ほお、やるな」


ドアの前に立っていたのはオールバックで黒コートの男。

額に逆さまの十字架がタトゥーされている。

その男は先ほどが切ったドアの切り口を見ていたが、
すぐにへと目線を変えた。


「私は。貴方は誰?」


とは私の探し屋の時の名前。

仕事中はこの名前を名乗っている。


「自分から先に名乗る奴は珍しいな。クロロ=ルシルフルだ」

「へぇ悪名高い幻影旅団の団長さんですか」

「知っているとは光栄だな失せもの探しの""」


失せもの探しの""。それは失くしたものを探すのが得意な私の通り名。

流石、大物となると情報まで広範囲だね。


「貴方も知ってるじゃない。いつからいたの?まさか最初から
絶をしてたなんて言わないでよね」


会話をしててもは戦闘態勢を止めなかった。

ミシミシくる殺気は百言葉を紡がれるより
雄弁にクロロ=ルシルフルの強さを物語ってくる。

気を抜いたら、瞬時に殺されても可笑しくない。


「下の階で書物を読んでいたら急に上から人の
気配を感じたんだ。来て当たり前だろう」


古書と思われる本を取り出してそう語るクロロ。

全部を語ってるとは思えなくてもウソはみられない。


「こんな廃屋で読書とは物好きなのね」

「珍しいモノが好きなだけだ。
だから、お前にも興味があるな


ヒュッ

クロロが動いた。

キイィン


「っつ!」


薙刀の柄を使ってクロロの攻撃を防ぐ。

念で覆われたたった紙切れ1枚がとても堅いし、鋭い。

やはり強い!!


「反応が早い。やはり強いな」

「それはどうもっ」


力を込めてクロロを押し返してついでに腹に一発蹴りを入れる。

それはまったく予想してなかったのかクロロは面食らった顔をしている。

そして、口に手をあてて笑い出した。


「何が可笑しいのかしら?」

「ククク、いいな。、俺のものにならないか?」

「嫌ね」


一刀両断で断る。


「では、力ずくだ」

決定したとばかりに攻撃をしかけてこようとするクロロを斬りつけるが、
避けられた。いや、それを見越してた。


「額爾羅!!」


はそう叫んだ。

そうすると先ほど外したと思った切り口から
また別の空間への道が開き、すぐさまその中に入った。

今度はクロロだけが残された。


「やられた」


逃げられたというのにクロロはクツクツと喉で楽しそうに笑う。



最初見た時、綺麗だと思った。

金の鮮やかな瞳と艶やかな黒髪。

妖艶とは呼びがたいが下品にもならない、強いて言えば均整の取れた体躯。

綺麗なのに、人形のようなという形容詞はまったく浮かんでこなかった。

まだ16かそこらの小娘なのになんとも生命力に溢れるオーラを体から
発していたのだろう。


欲しい。

すぐにそう思った。

すぐに名乗ったのは面白いと思った。

会話をして馬鹿では無い事は分かった。

少し手合わせして決して弱い部類でないことを知った。

最後に、まったく検討もつかない念能力を使ってこの俺から逃げ切った。


「面白い」


今度は飽きるまで離しはしない。


「次会った時は…奪う」


それが盗賊だ。