07 戦闘を終え、家の中に案内される。 トゲトゲな意匠の椅子を勧められ、いくつものクッション を重ねたソファに座るシルバとは向き合った。 ゴトーは先ほどの戦闘を忘れたように執事に似合う邪魔に ならない笑みで紅茶とマドレーヌをトレーに乗せ、後ろに 控えている。 「イルミから大まかな話は聞いている。 己の師の子だけでなく、過去己の命を狙った奴の子である キルにまで気をかけるとは、酔狂にも磨きがかかってるな」 膝上に肘を置き、手に顎を乗せてシルバはクツクツ笑った。 はシルバのその様子を見て、ため息を大きく吐いた。 「……どうやら、怒り心頭だった私はただ貴方の手の平の 上で踊ってただけなのね」 家族愛とか教育信念を唱えようなんて無駄なことをするた めに来たつもりはない。 ただ、縛り付けすぎる生き方を子に押し付けるのだけは何 とかしたいと思っていたのだが、"縛り付け"から次の段階 に私が立ち会っていただけのようだ。 「ハンター試験は念能力のため? ゾルディックの後継者扱いされていながらも、まったく念 能力の存在を知らないのは変だなって疑問だったんだけど」 元々、能力者ではないとは知っていたが、まったく知らな いと知ったのは最終試験の時。 イルミが発をしてもキルアは纏すらする様子がなかった。 暗殺対象が念能力者のケースは多いはずだ。 なのにキルアがその存在をしらないなら、家長であり、父 であるシルバが噛んでいるのは間違いない。 「それも理由の1つだな。 も分かるだろう?キルの資質は極上だ。 だからこそ、型のできた家の特訓方法じゃ活かしきれない。 それに、イルミに任せた教育の弱点を修正するには外に出 した方が効率がいいと思ってな」 は小さく唸って、手を額に触れさせた。 「……確かに、あれは致命的な弱点ね」 己よりも強者に向かい合った時の弱腰。 あれはキルアの生命を守るだろうが、資質を曇らせる。 弱者のみを相手にし、強者には逃走するやり方も悪いとは 断定し難いが、私はあまり好みではない。 「……でも、それらすべて優秀な暗殺者を作るためなのね」 の確信のある問いかけにシルバは何も言わなかった。 しかし、その瞳は、肯定している。 「シルバさん、私は貴方の事は嫌いじゃない」 まっすぐと琥珀に近い金はシルバを見据えた。 銀の髪を持つ相手は同じように、その眼差しを受け取った。 「俺もお前のことは好ましいと思っている」 「でも、相成れない」 「そう、俺たちは仕事で人を殺せる。 だが、お前は感情に縛られ、人を殺せない。 キルはお前と同じだ。 ただ、束縛の名前が違うだけの話でな」 シルバに断定され、は苦渋の面になる。 シルバはその顔を見て、更に面白そうに喉をクククと 振るわせた。![]()