05 「ジンさんお待たせしました」 家に帰ってきたらソファで寝ていたジンさんを見て脱力し たのは数時間前の話。 材料の補充もしていないので夕飯は炊き込みご飯と冷蔵庫 片づけ鍋で夕飯を済ませることにした。 「待った待った。さっさとも座れ」 大盛りにした茶碗と箸を渡してからもジンと向かい合 う席に座る。 「ハンター試験はさっきのでほぼ語りつくしたかと思います」 「ゾルディックはどうだった? あそこの家とは俺はあんま縁がないんだが」 「じゃあ最初から順に話していきますね」 +* 「ふう、やっと着いた」 ゴン達から遅れること1週間。 ようやくはパドキア共和国のゾルディック家の門前に やってこれた。 木々を遮断する巨大な石壁がの目の前にあった。 いつも着ている仕事着姿でここ近辺では有名な門、通称 "黄泉への扉"を眺めた。 2対の厳ついドラゴンを左右に配置した堅剛な扉は、中に 住む人間達の心の壁の厚さも象徴しているように、は 感じた。 「おい姉ちゃんどうしたんだ? 今日の観光バスはもういっちまったぜ」 門の脇にある部屋からバンダナをした男性が顔を出した。 「いえ、私は観光目的ではないですから、観光バスは関係 ありませんよ」 は名刺入れをバックから出し、2枚の名刺をその男性 に渡した。 1枚は自分の仕事用の名刺。 もう1枚は去年、別れ際に交換した、シルバさんの名刺。 「私はプロハンターを営んでいると申します。 シルバ=ゾルディック氏に取り次いで頂けますか?」 その名刺の真偽を疑いながら、男性は執事室に電話をか けてくれた。 数分ほど部屋の中で待たされ、折り合いがついたらしく、 チョイチョイと手招きされて電話を代わった。 『ミッシングハンターの様ですね? 私、執事長を勤めているゴトーと申します。 シルバ様からお話は伺っているので、門を自力で開け、 道なりに進んで下さい。 中ほどで案内役を待たせています』 声色からするに、ゴトーという人3、40代の男性だと 想像した。 丁寧な口調に隠された棘に心地よいものは一切なく、 はため息を吐きたかったが、こちらが不躾なことをする訳 にも行かずに、肺の奥で推し止めた。 自力で…ね。客人だろうがなんだろうが最低限の腕は見さ せてもらうってことですか。 「わかりました。それではまた後ほど」 そう言ってこちらから電話を切り、男性―電話から察する に名はシークアントというようだ―に一礼してから部屋を 出た。 さっさと出て行ったを心配したのか、シークアントは 慌てて外に出る。 「おい平気か?その門は片方2トンあるんだ……………… ……ぜェ……?」 このゾルディックに雇われてからは白骨死体と顔を会わせ ること以外は、安穏と暮らしているシークアントだが、昔 はそれなりに名の知れた賞金稼ぎ集団のトップだった。 死線も強者も一般人と比べるのがおこがましいほど、経験 してきている。 そのシークアントも目の前の光景に声が裏返えり、阿呆の ように口を大きく開けっぱなしにした。 ギギギギギギギギギギギ 軋む石扉の頂上にはローマ数字の4かペイントされている。 「重っ!!」 3の扉が16トン。その倍で32トンもの重さがある のが4の扉だ。 ※ザトウクジラなどの15m前後の鯨の体重が25トン〜35トン 細い女の腕2本でしっかりその超重量を支えてきっている。 その光景は、驚きというより、馬鹿らしいとでもいいたく なってしまうものだった。 は自分が入れる道を確保し、石からすっと手を離した。ドオオォン
試しの門は閉まる時に風を作り、また下界と山とを 遮断した。 シークアントは、女の細腕で開けられてしまった門が 壊れたのかと思い、自分もおもいっきり押してみたが、 扉は1までしか開くことはなかった。![]()