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「ゴン、キルアは自分の家戻っただろうからその場所は
私が教える。
イルミはゴンがキルアを連れて行く試練として私は貴方の
家の防波堤の邪魔をしないということで手を打つ。
それでいいかしら?」
「うん」「……ま、金にもならないしその辺りが妥協点か」
「口喧嘩終ったなら講義を続けるぞい」


我関せずを通していた会長の合図で色めきだっていた合格者
は各席に戻った。
それから数時間、数年前に自分も聞いた内容が繰り返される。

投資規模・捜索地域範囲の拡大・使用可能機関増加。
これだけ特典があればちょっとした小遣い稼ぎでも一生食
べていける。
ハンター協会に照会しない場合、他人も使えなくも無いし、
上記の特典以外にも利用価値はあるので欲しいと思う輩は
吐いて捨てるほどいる。だから、このライセンスを守る事
もプロの仕事のうちなのだ。
実際私もライセンス狙いのバカ共を数え切れないほど排除
してきた。
本当に何でこんなにいるのだろうと言う位数で攻めて来る
ので鬱陶しい。
学校の授業に現れる睡魔が近寄ってくる気配がしてから
少しして、マーメンからの説明が終った。

「さて、以上で説明を終ります。後はあなた方次第です。
試練を乗り越えて自身の力を信じて夢に向かって前進
して下さい」

ここで一息。そして、部屋全体に声を反響させる。

「ここにいる8名を新しくハンターとして認定いたします!!」


8人か……あ、ゴンって半分以上説明聞いてないけど、
もしかして補充は私がするの?


受験生がネテロ会長の激励を、私とシャルの時と同じように
聞いて、解散し始めた。


「!」

ゴンは駆け足で私のそばにやってきた。
後ろからクラピカとレオリオ、ハンゾーとポックル、ボドロ
もついてくる。
椅子から立ち上がり、事務的な笑みに少し本当の笑みを混ぜる。

「皆さん合格おめでとう。
試験官としてでなく、一同業者、商売敵として歓迎するわ」
「丁寧な祝福に感謝、とでも言った方がいいのかね?
今期の試験では大変世話になった。
以後の活動、お主に続く功績を立てられるよう尽力する」

年長者のボドロはしっかりとした言葉の後、
握手を求めてきたので、快く手を握り返した。

「どんな分野であれ、ボドロさんが納得いく仕事が出来る
ように期待するわ」

「おいおい、もう試験は終ったんだからもうリラックス
した話し方でいいだろう?俺としちゃこれから是非
深い付き合いをしていきたいところなんだが」
「深い付き合いが恋愛を指し示すならお断りするわ
ハンゾーさん。一言二言の付き合いの女に唾かけてたら
いつか火傷するわよ」
「いやー、相手なら是非火傷してみたいっで!」
「貴様はミッシングハンターに対してなんつー事を
言っているんだ!!」

ハンゾーの脚をポックルがかかとで強く踏みつけ、
更に力点をネジつける。

「ポックルさんどうしたんだろ?」

ゴンがこっそりとレオリオとクラピカに耳打ちする。

「大方としての尊敬してますってパターンだろ。
結構いるんだそういうヤツ」
「それが悪いか!ミッシングハンターの偉業は同じハンター
として誇るべきものだろ!」

本人の前ではとても恥ずかしいので言わないで欲しい。

「俺はこれから幻獣ハンターを目指していく。
いつか会う事になるかもしれないが、その時は是非
力を貸して欲しい」

そう言ってポックルは名刺を私に差し出した。
思い出したようにゴン以外の4人も出してきたのでそれも
受け取っておく。

「ええ、その時はよろしく」

私も同じように名刺を差し出す。

「ホームコードは面倒だから持ってないの。
だから用事はケータイかメールでお願いするわ」
「えっと……ホームコード?」
「留守電専用の電話のことよ。ハンターは中々家に
いないから、メッセージ専用の電話が必要になるの。
……昔は私も持ってたんだけど、諸事情により使えなく
なっちゃって」

クロロの奴がホームコードで家を割り出そうとしたから。
あの山奥に回線を引く苦労を思い出すと、それを駄目に
された怒りが再び蘇ってきそうだ。

「ならは今どうしてるの?」
「私のケータイは特注品でね、全世界対応でその上
私用、仕事、予備の3つの電話番号とメールアドレス
が使えるの。電波で盗聴可能性はあるから、あまり
大事なことは電話で言っちゃ駄目よ」
「まあ大体のハンターにとっちゃケータイ電話とホーム
コードと電脳コードが三種の神器だ。ゴンもちゃんと
揃えろよ」

レオリオの忠告に、ゴンはまた頭を傾げた。

「電脳ページってのは?」

くじら島、どこまで電子系機器がないんだ?

「電脳コードはパソコンで電脳ページを使う為に必要
なナンバーコードのこと。これはハンターライセンス
が使えるから無理に契約する必要はないよ」

私が簡単に説明してからクラピカが電脳ページについて
の概要を付け足す。

「電脳ページは簡単に言えば電信の万能情報辞典だ。
これは表層的な情報が多いし、デマもあるから使う時は
十分注意するのだよ」
「あ、そうだ。ロビーにパソコンが置いてあるから
"ククルーマウンテン"って単語を調べてみなさい。
実際使って見た方が分かりやすいし、キルアのいる場所
を調べられて一石二鳥だわ」
「ククルーマウンテンってところがキルアの家なんだ。
って、ごめん俺まだライセンス使えないんだ」
「は?」