46 ゴンとハンゾーが対峙し、2人の中央に立会人が立った。 「私立会人を勤めさせていただきますマスタです。 よろしく」 ハンゾーはマスタの顔を見てから声をかけた。 「よお久しぶり。4次試験の間ずっと俺をつけてたろ?」 「!お気づきでしたか」 「当然よ」 忍と言うからには尾行相手くらい気づくか。 これはホント経験がモノをいうスキルよね。 私はものすごく苦労した。 ジンさんに何度も叱られた。 この中で気づいてなかったのはゴンとレオリオだけ だから、以前の私のレベルも察せられよう。 「礼を言っておくぜ!俺のランクが上なのはアンタの 審査が正確だったからだ!まー当然のことだが!」 「あのハゲもよく喋るわね」 「同感です」 でも私と同い年で上忍なのだからかなり優れた忍者 で、この試験の結果も良い。 無駄話しても機密は守るなら多少お喋りでも平気か? 「それはそうと、勝つ条件は「まいった」と言わせるしか ないんだな?気絶させてもカウントはとらないし、 TKOもなし」 「はい…それだけです」 マスタの答えを聞いてからハンゾーはちらりとゴンを見た。 この勝負のえげつなさに気づいたな。 「それでは、始め!!」 開始合図の瞬間、ゴンはその場から走り出した。 足での攪乱…が。 「おおかた足に自信ありってとこか、認めるぜ。 子供にしちゃ上出来だ」ドゴッ
ハンゾーはゴンの頭を大きく揺らす様に首に強打を入れた。 何が起きたか半分も分からず、ゴンは開始数秒で体を床に 寝かせた。 普通の試合ならここで終了だが、この試合はそうはいかない。 「ほれ目ェ覚ましな」 上半身だけを起こさせ、ゴンの頭を起こすため少し背中に 力を加える。 「気分最悪だを?脳みそがグルングルン揺れるように 打ったからな。わかったか?差は歴然だ。 早いとこギブアップしちまいな」 「いやだ」 ゴンは強気に舌を出して試合放棄を拒否。 すぐに顔が横に揺れる。 「ゲホッ」 拷問慣れしてる。ヘタに体を傷つけるやり方だと 相手が意固地になることを理解しているから、 脳への打撃を大きくし、理性を着実に減らしていく。 「よく考えな。今なら次の試合に影響は少ない。意地はっても いいことなんか1つもないぜ。さっさと言っちまいな」 「誰が言うもんか!」 嘔吐と眩暈に苛まれてもはを噛み締めて踏ん張る。 ハンゾーはその意志を挫くべく表情感情一切取り除き 責め苦を続ける。 「全く、会長の性格の悪さときたら私達の比じゃないわよ。 気軽に参ったなんて言える奴がここまで残れるわけない じゃないの。 どうするの?こんな一風変ったどころじゃ すまない戦闘システムじゃ、あの子ヤバイわよ」 メンチはゴンを気に入っているの心情を思ってか、 顔色を伺った。 しかし、は若干目を細め、眉を顰めるだけ。 「この程度で音を上げて勤まる仕事ですか?」 ぎゅっと拳を握る。 「まだ立会人がいる勝負です。でも、ここから先進もうと 思ったら卑怯も反則も正当な手段となる世界で生きなくて はいけないんです」 ここはまだ最悪になっても取り返しのつく空間。 「私の今の役目は、全てを見、覚えていること」 見ていて楽しくない舞台を見る観客。 ヘタな劇のようにうめき声と一辺倒の質問と答え。 それが演技でなく、本当の修羅場と証明する飛び散る 濁った血と唾。 舞台の役者は次第にシナリオを忘れていった。![]()