44 疲れた。 クラピカは重い体をベットに投げ出した。 4次試験の疲れ以上にの力の片鱗を見た疲れの方が大きい。 たったの数秒が数時間だと思った。 クラピカはに触れられていた首筋に触れる。 「今の私だと即死…か」 千の言葉で語られるよりもよくわかった。 どれだけ自分が力不足なのかと。 この試験だってそうだ。 例えば、1次試験…ゴンがいなかったら私は2次試験 会場までたどり着けなかった。 3次試験でも私のわがままで数時間潰れ、最年少の ゴンとキルアの活躍が目立っていた。 たった一人だったら、ここまで残れなかった。 しかし、旅団との対決は私だけなのだ。 だから、一人だけでも生き延びられる力。 それがないと先に進みようがない。 「強くありたい」 奴等を倒す為に。 「力が必要だ」 この暗黒の泥沼に誰も引き込まないように。 「よりも強くなってみせる」 それが、最低条件。 「あーあ、嫌われちゃったかな」 【もよく人の生に首を突っ込むものじゃ。 放ておいてもお主の得にも損にもならなかっただろうに】 「復讐を全否定しない私は復讐に必要な最低限のものを 教える義務があるはずよ。 "復讐はいけないもの" 人を失った悲しみと憎悪がそんな陳腐な慰めで 片付く問題じゃない」 復讐が次ぎに生きる目標となる。 少なくとも、全てに絶望してその人の後を追わない。 それは私が良く知っていた。 「珊底羅(サンテラ)」 【何じゃ?】 「私は愚かだね」 【すでに知っている】 「うん。だからこれからも私を助けてね」 弱さを誘うと分かっている感情を捨てられず、 優しさと囁かれる愚行を歩み続けるから、 助けとなってほしい 【名と導を与えられた恩に誓う。 妾は主の優しさも愚かさも闘争も守り抜くと】 それは忠誠ではなく、服従。 強き獣は一人の主の願いと命を守る為だけに この世にあり続ける。 「十二匹の守護獣の主として誓う。 私はこの生命が途切れるその日まで 貴方達と共に有り、道標であり続けると」 その誓いは約束ではなく、自身と獣への戒め。 違えることは罪となる。 クラピカ、復讐の先にあるものを知りなさい。 復讐で得るものを知りなさい。 復讐を思い止まれる事柄を探すのもいい。 復讐を推し進める過去と思いをすでに宿しているのだから。 「幻影旅団…私は貴方達を助けないわよ」 犯した罪の重さを感じられないのでしょ? 自分の欲望を満たすだけに走り続けるのでしょ? クラピカの復讐はしっぺ返しなのだから 貴方達が受け止めなさい。 悪とは何? 法を犯した者・モノ。 肯定されているものを否定するもの。 社会の中で排斥されるべき要素。 善とは何? 秩序を維持する者・モノ。 社会で肯定されるもの。 生命や活動を増大させるもの。 私の中で善悪とは絶対的なものではなく、 立場によって変わる境界線。 この世界で必要なのは事柄を肯定できるか否定できるか。 否、それは前の世界でも同じか。 「一方向な視点しか持たなかった楽できた んだろうけど、それじゃつまらないもの」 ピルルル 内線電話が可愛く鳴る。 「はい」 『?あのさーこれから試験官全員で会議ついでに ゴハン食べるから5階の第1応接間来てちょーだい。 今度は私が腕を奮ってあげたんだから』 「お!それはかなり楽しみですね。 一流料理ハンターの腕、また堪能させてもらいますよ」 『まっかせなさい!料理冷めるから早く来るのよー』 「はい分かりました」 受話器を置き、薙刀を振り、刃が通過した線に暗い穴が開く。 【妾達はお主の視線しか感じ取らぬ。 故にお主のみについて行ける故悩むだけ悩め。 の年頃は悩んで正解じゃ】 「サンテラ結構酷いこと言ってるよ。 …でもそうさせてもらう」 サンテラが穴に吸い込まれると穴は自然に消える。 それを確認してからは冷たくなった残りの 紅茶を飲み干した。![]()