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コンコン

鉄製のドアに、2回の小さな衝突音。

「入っていいわよ」

メンチが長いすを独り占めしながらノックに答える。

了解を得てからはドアを開けた。

「失礼します。お約束のチラシ寿司持ってきましたよ」
「ホント!?さっきから食べたくて仕方がなかったのよ〜。
やっぱり苛つく事があるときは美味しいもの食べるに限るわ」

が手に持つ皿を貰って、自分の隣に座らせるメンチ。

「が本名なのでそっちでお願いします。
私も一緒にご飯してもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

サトツはそれを快く承諾してくれた。

「にしても、あのミッシングハンターが料理の実力まで
一級品って、どこまで手を広げるつもりよ」

挑戦的な口ぶりの割には好意的な笑みを浮かべるメンチ
と反対には遠い目線を送った。

「師匠の特訓を受ければ死なない限り力はつきます」


ジンさんの特訓もきつかったが、師匠の特訓は幼心にとても怖かった。
いや、師匠もジンさんも人としては大好きだけどね。

の潤んだ目頭と遠い目に試験官三人は同情的
な雰囲気になってしまう。
一体どんな特訓なんだと気になるが、あえて手を突っ込まない
賢明さを彼らは持ち合わせていた。

「ねぇ今年は何人くらい残るかな?」

特製のチラシ寿司に舌鼓を打ちながら
メンチが全員に意見を聞きたがった。

「合格者ってこと?」

ブハラはフォークを持つ手を一旦止める。

「そ、中々のツブぞろいだと思うのよね。
一度以外全員落とし
といてこう言うのもなんだけどさ」

本当にそうだよ。そして私はもうプロだ。

「それはこれからの試験内容によりけりでしょう?」

プチトマトを口に入れる。

「まあね。それに、結構いいオーラ出してた奴いたじゃない。
サトツさんどぉ?」
「ふむ、そうですね。今年はルーキーがいいですね」

サトツはそれに答える。しかしそれでも口が見えない。

「あ、やっぱり?私は294番がいいと思うのよ。ハゲだけど」
「ハゲ関係ないんじゃないですか?」

最後のはあんまりだろうとはツッコミをいれる。

「私は断然99番ですな。彼はいい」
「キルアですか」

確かに、子供に圧倒的に不利な経験もキルアならその辺の奴等より上だ。

「ブハラは?」
「そうだねー。ルーキーじゃないけど気になった
のはやっぱ44番…かな」

その番号に部屋の空気が張り詰める。
全員がヒソカに対して危機感を感じているからだ。

「メンチもも気付いてたと思うけど255番の人がキレ
出した時一番殺気放ってたの実はあん44番なんだよね」

肉を口に運んであいたフォークで空気を刺す。

「もちろん知ってたわよ。でもブハラ知ってる?あいつ最初から
ああだったわよ、あたしらが姿見せた時からず〜っと」

「ほんとに最初からですよ。受付であった時からああでしたから。
だからメンチさんピリピリしてたんでしょ?」

半分は私が側にいた所為もあると思うけど。

「そうよ、あいつずーっと喧嘩売ってくるんだもん」
「私にもそうでしたよ。彼は要注意人物です」

食後のコーヒーカップに手を伸ばすサトツ。
一口飲んで一呼吸置いてから続きを話し始める。

「認めたくありませんが彼も我々も同じ穴のムジナです。
ただ、彼は我々よりずっと暗い場所に好んで住んでいる」

「ヒソカはいつでも好敵手を求めています。私達ハンターもそれは同じ。
あいつにとってハンター試験はライセンスを得るよりもその人物を
探す事に重点を置いている」

はサトツと同じくコーヒーを飲んでのどを潤す。
コーヒー独特の苦みと砂糖の甘みが舌に程よい刺激を与えた。

「ヒソカは私と同じく異質です。ブレーキよりもアクセルを踏む
のが好きなんですよ」

「44番とが同じ?それは違うでしょ」
「はちゃんと人付き合い出来てるし」
「あんなのと自分を一緒くたに考えてはいけませんよ」

3人はそれは違うと猛抗議して来た。

ヒソカ言いたい放題言われてるよ。
それでも私はこの世界で生を貰ったものではないと
いう意味では、ヒソカよりも異質だ。

「それで、は誰が有望だと思う?」

「405番」

カップをテーブルに置いてはそう答えた。

「405番って、あの黒髪ツンツンの子よね?あの年でここまで
来たのは偉いけど…あんたが見込むほど期待できるの?」
「ええ。多分、ゴンはこの試験受かりますよ」

言い張る根拠はどこにあるのか定かではないが、
の言葉には淀みはなかった。