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第二次試験終了後、合格者を乗せて飛行船はまた飛来した。
ブリッジに集められ、前にネテロとメーメンが立ち、話が始まった。


「残った43名の諸君にあらためて挨拶しとこうかの。
わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」

改めて聞いてみるとなんとも豪勢な肩書き。
の脳内での独り言の間にも挨拶は続く。

「本来ならば最終審査で登場する予定であったが、
一旦こうして現場に来てみると」

ネテロは受験者の顔を首を回してみていく。

「なんともいえぬ緊張感が伝わってきていいもんじゃ。
せっかくだからこのまま同行させてもらうことにする」

ほっほっほと好々爺の姿勢を崩さないネテロに不信感を
募らせる受験者もいるだろう。

しかし、この覇気をどうってことないと扱う程の強さ
を感じる者がいるのもまた事実。

「それと、皆も気にはなっていることじゃろうから、
今のうちに説明しとくかの」

ネテロが手招きしてを自分の横に来させた。

「言っていいんですか?」
「かまわん。受験生の真似事は終いじゃ」

自分からさせておいて勝手ね。
とはいっても、このまま隠すのは私の心情が痛いし好都合か。

「そうですか」

目深にかぶっていた帽子を取り去ると、長い黒髪と
琥珀に近い金色の瞳が受験者の目を惹く。
彼女は社交的な微笑みを浮かべ、軽く会釈した。

「改めまして私は。
プロハンター名はと名乗っています。
貴方達より数年ばかり先輩ですね。
今年度のハンター試験観察方を請け負っています」

「プロ!?」「何で合格者が受験生に!?」「美人だ!」
「しかも探し屋のだよな!?」

それから次々とゴン以外の受験生が大いに
騒ぎたて、顔色が変化した。

「だと!?ミッシングハンターのか!?」
「道理で強いわけだよ」
「これで協会側の信頼も納得できるというものだ」
「ねえ何で皆こんなに驚いてるの?」

ゴンは不思議そうに素直な疑問を言葉にした。
すると、3人はガクリを頭を下げ、呆れた。

「ゴン、もう少しニュースを手に入れる方法を手にした方がいい。
プロハンターは昨年、史上最速でダブルハンターの称号
を取得した女性だ。
功績として名高いのは原因不明だった伝染病が公害病で
あったことの証明と治療法の確立。
解読不能だった古代文字の解読。
絶滅したとされたファルシラウダギの再発見と保護。
密猟者などの犯罪者捕獲人数は世界第3位の実力者。
彼女は失ったものを見つける事を専門とするために
ミッシングハンター(欠落を狩る者)と呼ばれている」

クラピカは辞書にのっているかのような簡潔な説明をした。

「公害病の発見とその対抗ワクチンがなかった場合の
死亡患者は100万とも1千万とも言われてるな」

レオリオはの正体を知った驚きがまだ抜け切れてない顔をしていた。

「俺は親父から話聞いただけだけど、すっげー強いって
珍しく褒めてたぜ」
「どちらにしろ、現在最も有名なプロハンターの一人だ。
どのメディアにも顔を晒さなかったから、
誰も気づかなかったのだな」

ざわめく受験者から自分の話を切り離させようと、
パンッと大きく手を鳴らした。

「私が受験生に紛れていたのは受験生の視点で試験官を
観察するためと、貴方達受験生の観察に都合が良かったからです。
コレから先は試験官として受験者を見守らせて頂きます。
皆さんの健闘を祈り、この場は失礼させていただきましょう」

はそう言ってすっと後ろに下がった。

「次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。
こちらから連絡するまで各自自由に時間をお使い下さい」

マーメンの最後の連絡を聞くと受験者はそれぞれ
バラバラに動き出した。
ゴンは解散と聞いてすぐにの元に駆け寄った。

「凄いや!クラピカの説明聞いて驚いちゃった!!」
「黙っててゴメンね」
「まさかすでに第一線で活躍しているとまでは考えなかった」
「があのプロハンター…敬語使った方がいいのか?」

の謝罪を聞いてから、クラピカが苦笑した。
レオリオはショックの次は戸惑いの表情になっている。

「今更目上扱いされるのも居心地悪いからしなくていいよ。
次の試験からは見守る立場だけど頑張ってね」
「それよりゴン、!飛行船の中探検しようぜ!!」
「うん!!」

キルアとゴンは余力たっぷりと飛行船の中で遊ぶ気満々だ。

「ゴメン。メンチさんとの約束が先に入ってるんだ」
「じゃあ終ったら例のヤツ頼むな!」
「俺のもね!!」

そう言って走って去っていくゴンとキルアの後姿を見送る
と疲れきっているクラピカとレオリオ。

「俺はとにかくぐっすり寝てーぜ」
「私もだ。おそろしく長い一日だった」
「2人共お疲れ様。毛布はあっちで借りられるよ。じゃあ私も行くね」
「あ、ちょっと待った!例のヤツってなんだ?」
「それは私も聞きたいな」

レオリオとクラピカはへと詰め寄る。

「え?ご飯作ってあげるだけだよ。2人もいる?
多分明日の朝ご飯になると思うけど」
「「いる!!」」
「分かった。じゃぁ、ゆっくり休んで。
ここから先も無茶しないと進めない道だから」
「それと、試験が終った後でいいのだが、少し話がしたい」
「俺も。俺は医者を目指してんだ。是非話をしてみてーな」
「いいよ。向上心のある人は大歓迎。
試験に合格したら、時間を作るわ」

はクラピカとレオリオにも約束して、
指定された部屋を目指して歩いていった。