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ジリリリリリリリ


ベルの音がけたたましく地下道に鳴り響く。

音を頼りにそちらを見ると、パイプの上にスーツを着た
クルリとカールした髭と髪が特徴的な男性。


ベルを鳴らす人形の頭を触ると、音はピタリと止まった。


「一次試験はサトツさんか」


ここは基本が試されるから、適任だね。

でも、あの事件以来会ってなかったけど全然変わりないな。



「只今をもって受付時間を終了いたします。

では、これよりハンター試験を開始いたします」



ピ―――ンと張り詰めた空気。

いよいよだと大多数が緊張し、高揚する。

フワっとサトツは重力を無視した着地で地面へ降りる。


「こちらへどうぞ」

「ゴン、クラピカ、レオリオ」


3人の姿を見つけ、そちらへと寄る。


「あ、だ。知り合いには会えたの?」


ゴンは歩き始めたのに着いていく為、鞄の肩紐を直す。


「まあね」


その間もサトツの説明は続いている。


「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しい
ものもあり、運が悪かったり実力が乏しかったりすると
怪我したり死んだりします。

先程のように受験者同士の争いで再起不能になる場合
も多々御座います。

それでも構わない――という方のみ着いてきて下さい」


ザッザッザ 
ぞろぞろと全員躊躇いなく足を進める。


「承知しました。第一次試験404人全員参加ですね」


ここまできて怖気づく輩はここにすら着けないよ。


「……おかしいな」


クラピカがいの一番に気が付いた。


「?」


レオリオは、まだ無理らしい。

ザッザッザ 


足音のテンポが次第に速くなる。先頭が走り出した。

第一次試験は持久走ってところか?


「申し遅れましたが私一次試験担当官サトツと申します。

これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」


周辺から疑問符が飛び交う。

歩いているのとなんら変わり無いのにスピードを速めていくサトツ。


「二次試験会場まで私についてくる事。

これが一次試験でございます。

場所や到着時刻はお答えできません。

ただ私について来ていただきます」



「成る程な」

「変なテストだね」

「さしずめ持久力試験てとこか。望むところだぜ。

どこまででもついて行ってやる!!」


そんなに簡単な試験じゃない。


走る距離やタイムリミットを不確かにして
強い心理的ストレスを与える。

精神力も同時に試される。一次試験には的確な内容だ。

失格者の把握もし易いからありがたい。

そんな事を考えながら走っていると私達が走る横に
ス――っとスケボーに乗った少年が涼やかな顔つき
で通り過ぎる。

「おいガキ、汚ねーぞ!!そりゃ反則じゃねーかオイ!!」


1人、NO99の少年に突っかかるレオリオ。


「違うよ。試験官は付いて来いって言っただけだもんね」

「ゴン!!てめどっちの味方だ?!」

「怒鳴るな。体力を消耗するぞ」

「レオリオ。この試験は基本持込は自由だから
何に対しても反則じゃない」


レオリオは四方八方から攻められ、苛々が募る。

この調子だと、間違いなくレオリオは落ちるな。

非情かもしれないが、早めの方が精神的にも肉体的にも
ダメージは少なくて済む。

本人の安全を考えたらそっちの方がいいだろう。

そして、またNO99へと視線を向ける。

どうやらゴンが気にかかってるらしい。


「ねぇ。君、年いくつ?」


自分かと確かめるように自分を指差して確かめてから。


「もうすぐ12歳!」

「ふーん。俺はキルア」

「俺はゴン!」

「ねぇ、そっちの人は?」


不意に話を振られて確かめるように自分を指さす。


「うん。1番だし、さっきヒソカとも話してたし、
気になってたんだ」

「知り合いとはヒソカのことだったのか?」


意外だと言いたげにクラピカは確かめを入れる。


「まぁ、仕事でちょっと。本当は極力会いたくない奴
だけど…皆も近づかないのを強く勧めるよ。

私は。18歳だよ」


「へー思ったより年上だね。オッサンの名前は?」

「オッサ…これでもお前等と同じ10代なんだぞ俺はよ!!」

「「ウソォ??!!」」


信じられないとゴンとキルアは声を揃えて仰天する。


「あ――ゴンまで!!ヒッデー。もぉ絶交な!!」


レオリオは長身だし、大人の男性とすぐに分かる
体に顔には10代ではそこまで伸ばさないだろう髭。

30代に見られたって文句は言えない。


「なぁ、だって酷いと思わないか?!」

「だって絶対10代に見えないよ!!なぁ!!」


レオリオとキルアが同時にに賛同を求めてきた。

クラピカ同様、他人のフリをしようと思っていた
矢先に聞かれてしまった。


「ほら、顔なんて人それぞれだし。

レオリオは大人の雰囲気が強いんだよ」


出来うる限り、レオリオを傷つけない言い回しをして、
レオリオはこの慰めに目頭をこすった。


「うう〜。分かってくれるのはだけだ〜!!」

「つまり、もオッサン10代に見えないんだ」


………キルア、それは言ってはいけないよ。

それに、私の故郷の友人達は10代に見えない人なんてザラにいた。


「だって、19でしょ?ってことは私と同い年だよ。
今年で私も19だから」

「同い年には到底見えないな」


クラピカの呟きがトドメだった。