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武器の手入れ・携帯食料・調味料・コンパクト水筒・お金の補充。
それらを終えると丁度いい時間になったので食堂へと足を切り返した。
「いらっしぇーい。さっきの人だね。相席だけど奥にどうぞ」
オジさんは私の顔を覚えていたらしく、キーワードなしにそのまま
エレベーターへと案内される。
「ありがとう御座います」
そして、例のドアを開けた。
ガチャ
開けて見るとそこには4人の男性―ウチ2人は10代―がいた。
「こんにちは。あなた達も試験…否、ターバンの人はナビゲーター?」
愛想良くは彼らに挨拶をした。
それに黒髪をツンツンに立てている元気な少年が爛漫の笑顔で
挨拶を返してくる。
「こんにちは、お姉さんもハンター試験?」
「こんにちは。どうしてこの人がナビゲーターだと?」
その少年の後に続いて金髪の端整な顔立ちに民族衣装らしき
服装の青年と、スーツをビシッと決めてサングラスの長身
の男も同じように挨拶した。
「俺はレオリオってんだ。よろしくな」
それぞれが問いを含めた挨拶を返してきた。
「私も受験者よ。よろしく。それと案内人って分かるのは
この人がキリコだからだね」
質問にすべて滑らかな適切かつ簡潔な返答を返す。
「ほお。私達が人間に化けてるときに見破られたのは初めてだ。
君も良いハンターになるよ」
キリコはあごを手で押さえながらまじまじと私を見る。
私が念能力者だと分かったのだろう。
でもそこで何もないように振舞うのが常套手段というものだ。
「それはありがとうございます」
私は軽く感謝の言葉を言っておいた。
「じゃあ俺はこれで。お前達、新人にしちゃ上出来だぜ。
お前等なら来年も案内するよ」
それだけ言ってキリコは部屋を出、それを見計らってなのか
エレベーターが下へと動き出す。
そして、それぞれが自分の立ち位置に近い席を
選んでテーブルを囲んだ。
「自己紹介がまだだったわね。私は」
「俺はゴン。よろしくねさん」
「でいいよ。私もゴンって呼ぶから」
「私はクラピカだ」
「俺はレオリオだ。よろしくな」
「こちらこそ、頑張りましょう。ゴンにクラピカにレオリオ」
3人はステーキを平らげながら自分の名前を明かす。
はそのまま平常を装っていたが、
本当はビックリして声が出そうになった。
それと同時にカイトの言っていた事に納得した。
確かに、ジンさんに似てる。
年頃も合っているし、このゴン君はゴン=フリークスに間違いない。
「失礼な奴だぜ。まるで今年は受からねーみたいじゃねーか」
レオリオはキリコのナビゲーターが最後に残した随分な
挨拶に腹をたててステーキをやけ食いぎみにナイフと
フォークを動かした。
流石に2回目は勘弁と私はステーキに手をつけていない。
「3年に1人」
クラピカが諭すように静かに口を開く。
何の統計だろうと頭を捻るレオリオとゴンを見て、
はその数字の意味を教えた。
「ルーキーが合格する確率ね。
新人に限らないけど、過酷なテスト内容に精神ショックを
起す奴なんてザラだよ。ベテラン受験者の潰しとかで
もうテストを受けられない体になってしまう人もいる。
それだけ危ない試験だよ」
だから、私みたいなのが事後処理任されるんだけどさ。
あんまり死者出すと当たり前の事だけど身内からのクレーム酷いし、
死んだとしても遺体か形見は拾っておく必要がある。
発信機があるから、保険や言い訳用みたいなものだけどさ。
「は今年は初めてじゃないのか?」
レオリオは水の入ったコップをテーブルに置く。
良く知っているから試験を受けた事があるだろうと判断したのかな。
「3年前にね、受験会場に行かなかったけど」
実際は会場に行ったし受かったけど、この位の嘘はしょうがない。
「・・・でもさ、何でみんなそんなにハンターになりたいのかな」
ゴンはフォークで刺したステーキを口に頬張りながら
キョトンとした裏のない表情で問うた。
「随分今更な質問だね」
は何も知らないで受験した度胸を褒めるべきか、
呆れるべきか本気で迷った。
「お前本当に何も知らねーでテスト受けにきたのか!?」
信じられないと言いたいようにレオリオは唾と残りかすを
とばしてゴンに詰め寄る。
「「ハンターは最も(儲かる・気高い)
職業だから(なんだぜ・なのだよ)!!」」
クラピカとレオリオの声が揃った。
はクラピカとレオリオがゴンに早口で自分の目指す
ハンターとは何なのかとゴンに言い聞かせる様子を
我感ぜずと見守る。
「え、ええっとはどうなの?」
同時に力説攻撃を逃れる為なのか私に話題が移った。
私はちょっと考えて、自分なりの答えを導く。
「2人共ハズレじゃないよ。確かに、お金は他の仕事に
比べれば桁は軽く1つ2つ違うし、誇りを持って仕事を
している人も沢山いる……健全かどうかは何も言えないね。
私はハンターの仕事は目的を叶える為にあると考えてる」
「目的?」
「探しているものがある。欲しいものがある。
ハンターライセンスはその為に必要なもの。
決してライセンスを取る事がゴールでない」
何とも言えない曖昧な表現だが、重みのある言葉だった。
端整と呼べる顔立ちには暗い表情が見え隠れする。
チ――――ン
「ほら着いたよ。受付済まさないと、後もうちょっとで試験開始だ」
元の明るくて人懐っこそうな笑顔。それを見て人安心した3人は。
「うん」「ああ」「話の続きは後回しだな」
そう言ってエレベーターから出て行った。
