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知らせは突然のものだった。


「ネテロ会長、寝言は寝てからいうべきです」


『寝言じゃないわい。、もう1回ハンター試験受けてみんか?』



これが寝言や妄言でないというなら何なんだ。


は手で目を覆い隠したくなった。

いっそ現実逃避したかった。


今年こそのんびり余裕のある日々を過ごそうと思ったのに。

さっきカイトとその仲間達と年越しして帰ってきたばかりなのに。

どうしてこうすぐに厄介なことが舞い込むの!?

今年19だから厄年ということか?


危うくケータイを破壊しそうになるが、精神コントロールして
それを押し止める。


『とはいっても、正確には試験官としてじゃ。ほれ、ピイピイ煩い
輩を静めるには実績を1つでも積んで黙らすのが一番じゃろ』


「つまりアナタは私に観察方をやれって言いたいんですか?」


『話が早いのう、その通りじゃ』


一体、今まで何人がこの老人を影、もしくは心の中で
クソジジイと叫んだのだろう。

今、私は切実にその一員となりたい。






観察方。

ハンター試験において毎年1人〜3人程の人数が請け負う試験官の1つ。

観察方に任命される者はプロ、もしくはプロと同等と認められた
人間に限る。

他の試験官や受験者の不正、不始末の処理及び脱落者の安全確保と
事後処理、その他を任される。その仕事内容により、ハンター試験
受験者の中に潜り込む事例も少なくない。

この上なく面倒で、そして責任重大なのに無償。

それ故、協会への貢献としてはそれなりの位にある。




知識だけでしかないその役職に、まさか自分が回されようとようとは
考えもしなかった。


髪を縛っていた髪紐を強引に取り去って、はイラつくのを
抑えることなくぶっきらぼうに了承をした。


「ったく、わかりました。やりますよ!
どうせ他に人がいないから私にきたんでしょう」


『またまた正解じゃの。お礼に1ついい事を教えてやろう。


今年はジンの息子が受験するぞ』


ケータイから聞こえてくる電子音に変換された老人の声は
私を驚かすのに十分な意味を持っていた。


「…へえ、なら最初からそう言ってくれれば良かったのに」

『ほほほ、それでは最終試験で会おうぞ』


プツリッ


通話が切れて、折りたたみ式のケータイをたたんでカバンにしまった。


「さーて、年始から面白そうね」


凛然とした笑みを浮かべて、は部屋のドアを開け放った。