#06







アニラの作り出した穴が消えると、は会場の
真ん中にいる羊をこちらへ手招きした。

「ハイラ、もう結界はいい。遺物も全部運ばせた」

【主ちゃんは逃げなくていいの?】

「今逃げたらあいつ等は追ってくるから」


は警戒態勢を崩さないまま旅団を睨みつけた。


【主、奴らも眠らせるか?】

「彼らには無理。音速よりも先に鼓膜を塞げる」

そのくらい簡単にできるのが、幻影旅団メンバー。

「まいったね。まさかがいるなんて思わなかったし、
どうする団長?シュエルツ病院行く?」

「いや、もうあれはいい。

全員の生け捕りにかかれ」

「「「「「………………は!?」」」」」


今、とクロロ以外の旅団の心が1つになるという
ありえないことが起きてしまった。


「団長、あんな子供にまで手出す気か?」

インディアンのような巨体の人に始まり。

「16かそこらでしょあの子」「ロリコンギリギリじゃね?」

に手出したらいくら団長でも許さないよ」

「女、逃げるのが身のためね」


紅一点、眉なし、シャル、覆面と次々言葉の刃物が降り注いだ。

おーい、仲間にまで非難されてるぞ。


は呆れ顔になってしまうのに対しクロロは眉を顰めている。


「俺はまだ23だ。たった7の違いでロリコン扱いされてたまるか」

「まあ、年の差とかはそれくらいどうでもいいが、

人として関わり合いになるのを拒否する」

「ほら本人もああ言ってるし、それに翡翠の髑髏どうするのさ」

「あれよりの方が楽しめそうだ」

「私にしろ髑髏にしろ遊ぶな!」


どれだけ貴重なものかわかって言ってるだろうから余計タチ悪い!!

もう漫才みたいな展開になってきて緊張抜けてきたよ!!


「自分で言うのも悲しいけど、私に女を求めるなら
絶対もっと素敵な人がいっぱいいるよ」

ずっとスポーツしてきたから普通の子より筋肉多いし、
太ももとか二の腕とか太いし……マジで悲しくなってきた。

化粧とかも今でもサンテラかシンダラ任せだもんな…。


妙齢の女性の姿をしている彼女達に頼んだほうがずっと
納得いく仕上がりになるのだから自身が覚えるのは
まだ先であろう。


「だからどうした?俺はに興味を持った。
他の女は関係ない」

「出たよ団長の女タラシ

「これで泣きをみた奴両手足の数よりいるよな

「煩いぞマチ、フィンクス」

きっとお仲間さんの言うとおりなんだろうな…。


「シャル、お宝諦めたのなら私逃げるけどいいよね。
絶対私のこと教えないでよ」


はシャルへとそう申し付け、アニラに目配せして
すぐにでも狭間を開けるよう促すと……。


「逃がすと思うか?」


クロロは右手に本を具現化させた。


ヒュッ ガッ

奇妙な浮遊感の後、は背中から手を伸ばされ、
腕を塞がれた。


「っ!?」

【【【主(ちゃん)!!】】】


いつの間に後ろに?違う、私が移動した!?

トゥエルブモンスターの位置からみて私が動いたとしか思えない。


「…っ対象物移動能力…てところ?」


余裕なフリをしようとしても、失敗している。

片手だけで抱きとめられ、身長差のために
は足がつかなくて宙吊りの状態である。

焦りはどうしても顔に出てしまう。

油断してたのを巧みに突かれたな。


「さあな。目的はすんだ。帰るぞ」


【主を離せ悪党が!】
【我らから主を奪おうというのか!?】
【主ちゃんに変なことしないでよおじさん!!】


ハイラの最後の一言は強力で、一瞬にして空気が固まった。


「……、あいつらを出したならしまえるな?
病院に奇襲をかけられたくなければ」

「…バサラ、アニラ、ハイラ」


行きなさい。

は彼らにアイコンタクトし、アニラは落ちたの薙刀を
拾い上げ、3匹は憎々しげに狭間へと戻った。


「シャル、同期のよしみで助けて」

捕まった時の体勢のまま運ばれ、
最後の足掻きでシャルに懇願してみる。

「ごめん、団長命令だから」

シャルナークは本当に申し訳なさそうに言葉を紡いだ。

「ぜーったい逃げてやる」

「飽きたら逃がしてやるから安心しろ」


飽きたらな。

念を押すようにクロロはそう言い、
は憮然としたまま連れて行かれた。