カイト
「いや、ほんと助かった礼を言うぜ嬢ちゃん」
倒れていた長身の男はカイトと名乗った。
随分溜め込んでいた食料は見る見るうちに消えていき、少し恨みがましくも
思うがそれを顔に出すほどは無作法な人間ではなかった。
それに、大怪我してたんだししょうがない。
そう思う事で自分を宥める。
「どういたしまして。でも思ったより元気そうで良かったです。
どうしてあんな所に倒れていたんですか?」
そう、まず何故こんな場所にいるかだ。
普通の人間はこんな深くの森までやってこない。
「探し物をしててな、それのアテがこの近くにあると情報を得てきてみたんだが、
森で迷ってその上随分面倒な仕掛けにハマっちまって…。それでせめて食い物
探そうと歩いていたらこの山小屋見つけて」
「力尽きて倒れたと」
うん、話聞いてるだけだと馬鹿。
でも、この人は強い。
念でオーラを見てもいい流れを作れてる。
「こんなに食ってしかも傷の手当てまでしてくれた
嬢ちゃんには本当に感謝してる。ありがとうよ」
「どういたしまして。で、その探し物は見つかったんですか?」
「いや、なかった。そう簡単に見つかるなんて考えてないけどな」
「ふーん。で、その探し物はスタコラさっさと逃げていった訳ですか。
ジンさんが急にいなくなったわけですね」
「本当にくえない人だから…ってちょっと待て!俺一言も人探しなんて
言ってないぞ?しかもジンさんやっぱりこの森にいたのか!?」
私の話の違和感をちょっと遅れて気づいて驚くカイト。
引っ掛けてみただけなんだけどこれがビンゴだったらしい。
「はい、つい二日程前まで。念について色々伝授してもらいました」
サンテラや他の皆の知識はうろ覚えで、しっかり技術を体得していた
ジンさんはありがたい先生だったよ。
「あ、でもカイトさんのことは何も言ってませんでした。
でも念能力者がここまで来て倒れてるなんて変だからどうせ
カイトさん来るのがわかってたジンさんが罠はったんですね」
うん、本当にくえない人だ。
「はぁ〜あの人は…で妹弟子の嬢ちゃんの名前は?」
カイトは疲れたように深くため息をついて帽子を被りなおし、
に名前を聞いた。
「そうか、そうも言えますね。私は。
こちらでは=ですね。初めまして兄弟子」
それから数日、私達は一緒に生活した。
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「はこれからどうするつもりでいるんだ?」
共同生活して早数週間。
傷もだいぶ癒えてきたカイトは夕食時に話を持ち出してきた。
行くんだ。
は瞬時にそう悟った。
「今、運び屋やろうかなって思ってる。それを少しづつ広げて来年の
ハンター試験を受ける。身分証明書がないのって不便だから」
ふわふわのオムレツをつついてはそう告げた
最初はハンターって名前で気が引けたけど、
私の世界のハンターとは意味合いが違うらしい。
この世界のハンターはどっちかって言うとコレクターみたい。
何かを追求するってあたりが似てる。
「俺はこれからジンさんの故郷行ってみようと思うんだ。
手がかりが少しくらいあるかもしれないからな」
カイトはマグカップに入れた卵スープを飲み干した。
も続いて自分の分のそれを飲み干した。
「もう行っちゃうんだ。ま、しょうがないけどね」
でも折角この世界で初めて友人できたのにな。
寂しい。
それが正直な気持ち。
「そういうわけで明日山を降りるぞ。も一緒に来い。
携帯くらい買っておかないと運び屋できないだろ」
有無を聞かないカイトの口調。
それなのにはとても嬉しくてすぐに是と返した。
「うん!」
