黒蝶陰陽師5
百鬼夜行のごとく溢れる魑魅魍魎を陰陽師達が必死
になって退治していく。
「臨兵闘者皆陣列在前!」
「オン マリウェイ ソワカ!」
呪文が彼方此方から轟いてくる。
「こりゃ骨折れるはずだよ」
野原を埋め尽くすのは異形の魑魅魍魎。
それは百鬼夜行すらも上回るのではないかと勘ぐってしまう。
一気に片づけるか。
懐に手を伸ばし、札の束を取り出した。
それを風に乗せるようにばらまく。
「我に下りし式達よ、我の行く手を阻む者がここにあり!
契約の元に呼び出す。我の手足となり敵をなぎ払え!!」
の言葉を吸い込んだ札から様々な形をした式達が姿を現した。
「下方に四、左右に三、我が元には赤鬼と青鬼!」
「「「「「「合点承知!!」」」」」」
式達に命を下し、辺りに群がる魑魅魍魎を囲んだ。
式は自分たちの円から出ようとする魑魅魍魎の頭を潰していく。
そして円陣を組み終わったと察知すると手で空を切った。
「天地に住まう八百万の神よ。
彼の眠りを妨げる者ここにあり。
裁きを与えるは我が使命!
空を駆けるは光と業火で闇を照らしめす稲妻!
轟け!光の剣よ!!」
ピガアァ
高らかに響野原に響くの声に答え、の式に
囲まれた魑魅魍魎は稲妻に焼かれる。
「開け異界へ通ずる道!彼の者達を迎え入れよ!」
止めとばかりに呪を唱えると、稲妻に焼かれたものは
何処かえと消え去った。
「すげっ…」
誰かが感嘆の声を上げた。
それほどの手際は良く、流れるような呪は
絶大な力を持っている事を他に知らしめた。
「蛇神が推す訳なのだ」
天文博士を任されている鹿目が納得したように頷いた。
「随分場慣れしているらしいっすね」
天文生の子津がに驚嘆の視線を向ける。
「朕の国でもあそこまで出来る人間そうそういないネ」
唐からやってきた王桃食も子津の見解に同意した。
何しろ今まで退治するのにかかっていた時間の
半分で今回は済んでしまった。
それだけの倒した量が多かった事を意味する。
すべての魑魅魍魎を払ったのを確認すると式はの周りを囲んだ。
「お疲れ様。これから直々呼び出すから出来るだけ控えててね」
「「「「「合点承知!」」」」」
は式達を労うとまた札へと戻す。
ひらひら舞うそれらはいとも簡単にの手元に集まった。
+*+*+*+*+*+*
「凄い術師じゃないか。真言じゃなくて普通の言葉で
目に見えぬ者を行使するだけでも難しいはずなのに」
牛尾は蛇神の作り出した水鏡を覗いての技術力に賞賛した。
「有無、腕を更に上げた也」
蛇神はすでにの力を知っているのでどこか
弟子の上達を喜ぶ師匠のような顔つきになっている。
「やはりあれだね。女性よりも男性が優秀だと根っこから
信じている頭の堅い連中にこの情景を見せてやりたいよ」
「まったく同感也。さて、我も鳥辺野へと向かおうと
思うが、牛尾はどうする?」
すくりと立ち上がった蛇神を見て牛尾は今更といった風に
檜扇をパチンと鳴らした。
「もちろん行くに決まってるじゃないか。
こんな時に働かないで何が帝だい?」
いつものように爽やかに笑むが、そこに見え隠れする
光は最高権力者としての義務を全うしようという誇り。
蛇神は何も言わずにただ礼をとった。
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