黒蝶陰陽師3
「録、白春、何匹殺った」
陰陽の助(※頭の次に偉い人)を担っている屑桐無涯が
部下の二人に状況報告を促した。
「俺は二十気です(×Д×;)」
「オラ十九ングです」
肩で息をしながら部下の朱牡丹録と久芒白春は答える。
「ご苦労。まったく、こうひっきりなしに来られてはこちらが持たん。
これで御柳に迎えに行かせた奴が使えなかったら牛尾の奴に直訴してやる」
ここ連日の術の酷使に流石に疲れを隠せないのか怒りっぽく
なっている上司を宥めるように録が話しかけた。
「一応相手は帝なんで穏便気に(−0−;)」
「ふん、奴がそれくらいでどうこうなるタマか。
鳥居の方はどうなっている?」
その問いは白春が答えた。
「暦博士達なら村中殿達が付いて結界の強化にあたり中ング」
絹に付いた埃を叩きながら白春が答える。
三人の辺りには物の怪・魑魅魍魎の骸がそこら中に転がっていた。
「あ、いたいた屑桐さーん。こっちも片づけ終わりましたー」
身の軽い軽快な走りをしてやってきたのは陰陽師兎丸比乃。
後から犬飼冥・司馬葵・辰羅川信二・子津忠之助と続いている。
「こちらはすでに済んでいる。殺り損ないがないのは確認したか?」
「はいっす。全て消滅を確認したっす」
「ご苦労。後は次が来るまで各自休んでおけ」
都に普段より魑魅魍魎が極端に増えたのは先月。
原因を突き止めたのはたった五日前。
原因は、鬼門が開き始めた事。
鬼門とは艮の方角――北東――にある黄泉への道の事をいう。
今までも物の怪の出やすい場所は鬼門と通説だったのだが門が
開き始めたことにより更に強く、凶暴な化け物が多く現れ出した。
「…で、応援に私が呼ばれたと」
走りながら事の顛末を聞いていたは思っていたよりも厄介に
なっていると確信した。
「屑桐さんはの事知らなかったっぽいから訝しがってたけどな。
女にこんな荒仕事やらせるのかって御上に怒ってたし」
「へ〜御柳君の上司殿優しいじゃない」
「否、あの人以上に自他問わず厳しい人はいねえ」
「ふーん、で、その陰陽寮精鋭陣がいる場所は?」
「鳥辺野だぞ」
由太郎が言い切ったその場所を聞いては聞き返す他なかった。
「はぁ?どうして鳥辺野!?」
平安京から見て巽の方角、つまり鬼門に位置しない。
ちなみに鳥辺野は火葬・風葬で有名な土地である。
「それがな、どうやらこれ開いた原因が古い悪霊でさ、
長岡京から見て艮の方角を選んだらしいんだよ」
「なんてはた迷惑な」
本来の北東よりも鳥辺野の方が都に近い。
それだけ被害は大きくなったはず。
「激しく同感」
猿野がげんなりした顔でそう答えた。
「その所為で鬼門の発見が遅れちまったし、
感の良い奴らは寝込んでるのもいるらしいぜ」
「それだけで済む訳がない。…死人が出てるでしょ」
由太郎が苦渋の表情になった。
検非違使とは現代でいう警察のようなもの。
被害の状況を一番よく知るのはこの中では由太郎だった。
「貴族でも十数人、庶民になるとまだはっきりした事はわからねぇんだ」
「…そう」
都のみでそんなに、つい最近まで地方に出向いてた
から全然知らなかった。
「もうすぐ着くぜ」
御柳の言葉を合図に全員が気を引き締めた。
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