華武





「あ〜たり〜な〜」


ここは華武の1軍用グラウンド。


只今、レギュラー達が各ポジション事に守備練習を行っていた。

皆真剣に練習に取り組んでいるその中で1人、サードの位置で
退屈そうにガムを噛む御柳が目立つ。


「御柳、いい加減真面目にやりんグしないと屑さんの五光が飛んでくるべ」


久芒がその近くで鼻水をすすりながら注意を促す。


「だって久芒さん。もう夕暮れ過ぎっすよ〜。カラスが鳴いて帰る時間っすよ。
下手にナイター設備があるのも問題だと思いません?」


早く帰りたいと漏らす御柳にもう1人忠告する人間が。


「ミヤ〜。そろそろ屑桐先輩が睨んでるの気付くべき気だよ(^o^;)/」


朱牡丹がセンターから危険を教えてきた。

ピッチャーのいるマウンドを見て見ると、
カツアゲをしたら成功間違いなしと断言出来る程の
恐ろしいオーラを出しまくりの屑桐がそこにはいた。


「御柳…「す、すいませんでした!!!
って、そういや屑桐さん、今日は早退するんじゃなかったんすか?

そんなような話、部活前に言ってませんでしたっけ?」






さる数時間前の部室にて。


『今日は親が帰りが遅いから早めに帰宅する』


ユニフォームに腕を通しながら屑桐は今日は早めに帰宅する旨を伝える。


『分かった気〜(>ω<)b』

『それじゃしょうがなイング』






グラウンドの人間がちらほらとそういえばと思いだした。

「………録、今の時間は?」

御柳に指摘され、思いだしたように朱牡丹へと時刻を尋ねる。

「7:35気です(++;)」


とっくに帰らなくてはいけない時間を過ぎている。

兄弟も心配しているだろうと、マウンドから降りて出口へと早歩きで向う。

「悪いが、俺はこれで「「無涯兄ちゃーん!!」」


ドカァァ


丁度、金網に設置してあるドアを開けると2つの影からタックルを受けた屑桐。

そこで倒れ込まないのは日々の鍛錬の賜物と言えよう。


「っ痛、無汰に無二子!何でお前等がここにいる!?」


屑桐は驚きながらも2人を受け止め、問いただす。


「誰っすかあのガキンチョ」


その2つの影は小学生ほどの男女。


御柳は高校に子供がいる事事態に疑問に思い、答えが返ってくるかどうかも
わからない質問を言葉にした。


「屑さんの弟妹だべ」「確か今小学5年と4年気だよ」


付き合いが1年長い久芒と朱牡丹がそれに返答をする。


「で、何でその弟妹がここに?」

「私が連れてきたからだよ」


いつの間にかに後ろからひょこりと顔をだしたのは。

「「「!!??」」」


何故か校舎の影から出てきたのはつい最近、ゴミ箱と似たような部室を白亜の城と変え、
十二支との練習試合で女とは思えない実力を華武に知らしめた人物がそこにいた。


「おv〜俺に会いに来てくれたの?嬉しいじゃん」


の姿を見つけると同時にに張り付こうとする御柳。


「「「違う(から・気・べ)」」」


それをひょいと避けると御柳に足技を同時に繰り出した久芒と朱牡丹。

それぞれが軽やか且つ鮮やかな身のこなしだ。


、何故おまえがウチの弟妹と?」


が来てくれたのはとても嬉しいのだが、
自分の弟妹に何の接点があるのか見当もつかない。


「あのさ無涯兄ちゃん、姉ちゃんは俺等を助けてくれたんだよ」


無汰が早口ぎみに屑桐に話しかけ、今日あった事の説明を始めた。










数時間前。


もう少しで夕暮れのほのかな赤い光がくる時間帯。

野球部が帰るにしては早い時間のはずなのだが、はすでに帰路の道を歩いていた。

その足が信号待ちによって止まった。


「疲れるな〜。遠征が遠いとこういう時大変だよ」


華武戦も終って数週間。

それなりの強さの相手でも着々と白星を勝ちを集める十二支。

今日は疲れを取れと厳命されてそのまま家に帰る予定だったのだが……。


パッパー!!


クラクション音が辺りに響き渡る。

車が、暴走しているかのように歩道、つまりこちらへと真っ向から向ってくる。


「きゃぁぁ!!」「早く逃げろ!!」


それに次々と気付いて逃げ惑う人達、もその後に続こうとすると、
人込みで動けなくなってしまっている2人の子供に車が迫っているのが見えた。


「危ない!!!」


は反射的にその子等を庇うように抱え込んで走り抜ける。


ガシャアァァン


車は壁にぶつかり破片を辺りに撒き散らせる。

ボンネットから煙吹きあがり、視界が悪い。

「ぶつかったぞ!!」「女子高生と子供は!?」


その現場を見た物は事故に巻き込まれたと子供を捜す。


あの車の壊れ方では命は無事でないだろうと誰もが思ったが。









「ふぃ〜。危機一髪ってとこかな」


車の反対側には、無事に生きていると子供2人の姿。


子供2人を抱え込んで間一髪の所でスライディングして避けたようだ。

制服がは汚れ、擦れて少し破けてしまっている。


「おぉ!!無事だ!!」「奇跡だ!!」「あの娘スゲェ!!」


野次馬と化した周囲の人間は大脱出劇をしたを騒ぎ立てる。


「大丈夫だった?」


それに意を返さず、は助けた子供2人に声をかける。


「う、うん。お姉ちゃん有難う。おい、無二子、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫だよ無汰兄ちゃん」


女の子が無二子ちゃんで男の子の方が無汰君か。


「って、無二子!頭から血出てるぞ!!」

「え!?」


車の破片か、何かで切れてしまったらしく、額から血が流れている無二子。


「大変!早く病院に行こう!!」


は2人の手を掴み、行きつけの病院へと2人を連れて行った。






「お姉ちゃん本当にありがとう」「ありがとうございました」


病院に行った後に3人共、汚れてしまった服を着替えるために村中家に帰ってきた。

ついでに今は家にはこの3人しかいない。


「2人共無事で良かったよ。で、私は。貴方たちは?」


まだ自己紹介をしていないので名を名乗る。

2人もそれに答えて元気良く自分の名前をに教えた。


「屑桐無汰です!」「屑桐無二子です!」


……………………屑桐?


はその苗字を聞いて、少しの間、頭が回転しなかった。


「でも、どうしようか。無涯兄ちゃんも帰ってこないし」

「家の鍵、曲がっちゃったからもう使えないよ?」


どうしようと顔を見合わせる兄妹を見ながらはまだ固まっていた。


無涯?……………確定じゃん。








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