1 「やっちゃったねー」 の呆れた声が私の胸を深くえぐった。 「アハハ」 もう乾いた笑い声しかあげられない。 危うく手に持っている中身入りの紙コップを握り潰して しまいそうになるくらい、自分の失態に苛立った。 「謝りにはいったのか?」 忍は雑誌をパラパラめくりながら私へと問いかけた。 「一応両方の監督とコーチには行ってきた」 残りのココアを一気に喉へと流し入れて今度こそ握り 潰し、ヒュッとクズカゴへ向けて投げた。 コーン 握りつぶされて丸くなった紙コップは見事に中へと収まった。 「ホールインワン。流石黒蝶。コントロール抜群」 パチパチと拍手を送る琴美は私の起こした珍事を 楽しんでいるに違いない。 「たった10m外して球が投げられるもんですか。 あーあ、初日からホントやっちゃったなー」 時は数時間前に遡る。 * 「もうヤダー!何で人身事故なんか起こるのよ!! お金の無駄遣い!時間の無駄遣い!最後に命も無駄遣い!! 無駄遣い尽くしじゃないの――!!」 電車が1時間もストップしてミーティングに遅れそうな為に 廊下を急いで走る人物は2人。 1人は長い黒髪をなびかせた。 今年の中学女子ソフトボール日本選抜合宿に呼ばれた選手の1人。 「だからうちの車使うかって言ったじゃん」 隣を走っている長身の短髪は加西。 一見男のようにも見えなくないが生物学上は女である。 こちらはすでに間に合わせる事を諦めているようだ。 「ヤーサンの黒塗りの車で来るなんて嫌!」 ちなみには東日本随一の勢力を誇る鬼村組の末娘。 両親は不倫関係にあるので別姓である。 「でも流石に嫌かー。でも自身 は親父に気に入られちゃったけどね」 立派な大親分してるよ? その所為で以外ずっと友達できなかったんだし。 は最後の一文を喉で飲み込んだ。 「私はヤクザ家業が嫌いであってとかのお父さん が嫌いなわけじゃないからいいの!」 きっぱり言い切り、は廊下の角を曲がった。 「…そんなにきっぱり言えたのはだけだよ」 の位置ではの嬉しそうな笑みを見ることは叶わなかった。 角をまがってすぐに大き目のドアが存在していた。 「ここでいいんだよね?開けるよ!」 はドアの前に止まってドアノブに手をかけた。 も後ろで控えるようにして立っているが 送られてきたプリントとミーティングする部屋の 番号が違う事に気がついた。 「ちょい待「すみません遅れました!!」 バンッ ドアが大きく開け放たれた。 中には同い年の少年達が座っていた。 「あ、あれ?」 しーんと辺りは耳が痛い位に静まり返っている。 「、部屋違う」 がいくばくも低い位置にあるの肩に手を置いた。 「女子ソフトはもう1つ上の階よ」 コーチ側と思われるテーブルに座っている綺麗なお姉さんが にっこりとした笑みをプラスして教えてくれた。 「あ、お邪魔しました。教えてくれてありがとう御座います……」 私は自分の顔が真っ赤になっているであろう事を頬の体温で知った。 すっごく暑かった。 * 「うん、やっぱりは大物だよね」 当人であるくせに人事のように笑っているに 拳を向けたくなっても致し方なかったと自分でも思う。 「私もその場にいたかったな。来た時マジの顔 おたふくみたいだったもの」 琴美のからかいにまたあの恥が蘇ってくる。 「絶対あのサッカー少年達とは会いたくない!!」 間違えて入った会場は中学サッカーで都選抜の選考会に 集まった人達らしい。 あの後に大爆笑の声がこっちの耳にまで届いた。 「それは無理だろうな」 「何でよ忍」 パタンと雑誌を閉じてバックの中に仕舞うと変わりに出てきた プリントはこれからのスケジュール表。 「食事は彼らと一緒の時間帯だ」 忍の指差す項目には。 ※1 食事は貸切に出来ない為、他の利用者と一緒になる。 中学生らしい行動をとるように。 だったら日程重ならない様にしとけよ。 はベットの上に崩れ落ちた。 NEXT