カオス(混沌)です。
クロス・スクランブル



Good-by




「もう着いちゃったよ……」

空に浮かぶ雲の下から見えたのは、灰色の像
……NYの象徴、自由の女神だ。

事の始まりは3日前に遡る。

「、ゴン。突然だが我が家はアメリカのNYに3年
ほど移住することになった」

父さんは徹夜明けのしょぼしょぼした目を擦りながら、
「今日の夕飯は外食だ」くらいの口調でその重大事項を告げた。

「え?父さんと母さんだけが行くんじゃないの?私達も一緒!?」は中学に入学したばかりで本当に悪いけど、今は紀洋も埼玉
にいないし、滝野さんのとこに3年間も預けるわけにはいかないだろ。
しかも短くて3年だからもっと延びると思う。
だったらいっそのこと家族全員で移住してしまおうと母さんと決めた。
ああ、ゴンも一緒だから安心しろ。
ジンもユタ州で面白いもの見つけたらしいからアメリカにいるしな。
家は陵刀先輩の別荘を借りることになってるから安心しろ」

そう言って居候のゴンにも荷物の整理をするように言った。

「出発は明後日の4時だ。学校の方は母さんが手続きするから友達に
しばしの別れを言っておくんだぞ」
「明後日って早っ!!なんでもっと早くに言って
くれないのよパパのバカ!!」

「そうなんだよ。本当は2週間前くらいに決まったんだけど
父さんアフリカゾウとピューマとエゾカモシカの手術で忙し
くて伝えるのすっかり忘れてたんだ。
うん、伝えたから俺は寝る。夕飯になったら起こしてくれ」


そして父は本当に夕飯まで寝た。

私ととゴンがどれほど苦心しても、うめき声すら上げなかった。



それから、とゴンは友達の家へと駆けて行った。

私は、朝ごはんを片付けて、てくてくと師匠の家へ行って、
数年のお別れを言った。
丁度よく兄弟子もいたので、1つ手間を減らせた。


「何かあったらお金気にしないでぼくのとこに国際電話
かけるんだよ。もしくは手紙。
ああ、できれは月1くらいでほしいな」
「父さんがパソコン繋いだらメールします。
行ってきます師匠、雪さん」


次に、ライバル兼友人の男友達3人組。
彼らは野球部に入っていて、その練習が終って
から声をかけた。

「ニューヨークぅ!?しかも短くて3年って長っ!!」

御柳が夕方の帰り道に近所迷惑な大声を上げた。
彼にとっては女だけど、他の女とは同じにできない友達の
突然の別れに、驚いてショックを受けているだけなのだ。


「私もそう思う。英語なんて簡単な会話しかできないのに…」

親の突然には慣れている。
幼稚園に通わないで親と一緒に世界中の地を踏んだ。
間近で両親の仕事の偉大さと重要性を学んだのだから、
それを阻む意見を出すことは、にはできなかった。

犬飼は捨てられた犬の様に目を潤ませてを見下ろした。

「とりあえず、こっちに残るのは、無理なのか?」
「無理。もう本決まり。それにあの生活能力のない両親
だけなんて心配すぎて胃潰瘍になる」

母は洗濯機に洗剤を1箱全部入れて脱衣所を泡だらけにする。
父は本を読みながら料理をして卵焼きでも焦がす。
妹はまだマシだけど、外見に似合わない辛党で
本人以外は食えたものじゃない。
居候の弟分、ゴンは唯一普通に家事ができる。
でも栄養配分まで考えて献立は作れない。

……私いなくなったら家はどうなるだろうと
本気で心配になった。

「ベリーショックです。あちらに行ってもバットとグローブ
を仕舞い込むようなことにだけはならないで下さいよ」

3人の中では一番感覚的に馬の合う辰羅川は
いなくなるなという無理を言わず、あちらでの
生活を心配してくれた。

「うん。帰ってきたら、また野球しよ」


夕暮れのオレンジは、一滴の涙を綺麗に見せた。

生まれた国から、そんなに長く離れるのは、
実はとても不安で、彼らと会えなくなるのが
とても寂しかったから。

それでも、さよならと言った。

不安でも、嫌でも、言わなくてはいけなかったから。