#10








「おーす、今帰ったぞ」

「ご苦労石坂」


文芸部の部室のドアを開けて中に入る前に
報告を口にする石坂に下重が答えた。


「あ、兄ちゃん達来たよ」
「遅せぇぞ馬鹿猿」


部室内には牛尾・獅子川・鹿目・柿枝・虎鉄・猪里
犬飼・辰羅川・猫湖・子津・司馬・兎丸.

文芸部は唐澤と下重・新井が所狭しと中に入っていた。


「主要な奴らは集まったか。5時間目サボりになるけど
かまわないか?3−Dは自習だからいいけど」

さんの方が気掛かりです。致し方ないでしょう」


辰羅川の返答に全員が同意を示した。


「んじゃいいな。新井用意できた?」


石坂は机の機械と向かい合い、ヘッドホンをして座っている新井へ確認をとった。


「バッチシ。金なし・時間なしで作った割には音もいい調子だ」


獅子川が聞きずらそうに疑問を口にした。


「あのッよ。そのスピーカーとか機械とかでどうして
の本音が聞けるてッ言うんだよ?」

「もちろんこれが盗聴器だからだ」


……野球部員に驚きの沈黙と蔑みの視線が石坂に投げつけられる。


「今と一緒に屋上だよ。本体はに持たせて
あるんだ。そうでもしないと聞けないだろ?」


新井は顔色ひとつ変えずに機械の微調整をしていく。

は新井にとっても良い後輩でもあるし、関連の
一番の功労者でもある。

その為にこうして受験生なのに時間を割いてくれている。

同意を求める台詞に頷けなくもないが罪悪感のある方法だ。



「それはそうだが、これは立派に犯罪なのだ


鹿目の言う通りである。


「気が咎めるならここ出て行ったほうがいいぞ。

俺だってがここまでにならなけりゃする気なかったしな」


君の不調の話かい?」


牛尾が会話へと参加してくる。

石坂は正解と合図するのに親指と人差し指を合わせて丸を作った。


「目に見える不調より神経の方が結構ヤバイ。中学の時の俺と一緒だ」


石坂は自分の定位置の椅子に座った。


「…君の場合は怪我だったんだろう?
それと何の関係があるかわからないけど」


「思いっきりやれない悔しさ。

群れから外れた孤独感。

理不尽な理由への憤り。

その他諸々。痛いぜ、これってさ」


あさっての方向に目を向けているが、
遠い過去を見ているような眼をしていた。


「石坂部長、もう話始まるっぽいですよ」


唐沢がイヤホンをはずして石坂に報告した。

下重と石坂が視線を合わせてから下重が口を開く。




「一応言っておけど、は無敵じゃない、1人の女の子。

あの子の本音がどんなものかは聴いて見ないとわからない。

それでも聞きたい奴はここにいろ。嫌な奴は出ろ」


顔立ちが整いながらも表情の変化が無い分、余計に迫力のある
下重の脅しを聞いても出て行く者は1人もいない。


「覚悟ありか」


石坂が組んだ腕を解いてそう漏らした。


「俺は、自分の悩みをに解決してもらったようなもんだ」

犬飼は自分の肩に触れた。

「それが、有り難かった」

があのままだとこっちがテンション下がるのだ」

「今のままじゃ気持ち悪Riい。悩みがあるなら知っておきたいんDa」


言葉が重い。

知ってはいけないかもしれないが、このままではいけないと分かる。

どうにもできないかもしれなくても、聞きたい。


「新井、ボリューム皆に聞けるように上げてくれ」


決心を聞き入れた。


「あいよ」




の本音はどこに?

















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