#3






『2番ファースト小芥子君』


1投目は打者から外側に向かう球、スクリューボール。


「しかもあれ帥仙さんのダイバースクリューよ」

「華武のNo2ピッチャーの持ち球まで・・・」


牛尾の頬に一筋の汗が流れる。

夏の暑さのせいか、それとも影州のコピー球の
バリエーションの多さのせいか。

打ったがサードよりの線を越えたファールボール。


「おい、あの蜘蛛男どこまで追ってんだ?スタンド入っちまうぞ」


犬飼の言う事はもっともなので肩をすくめるしかない。


「さぁ?私もセブンブリッジの試合見るの初めてだから。
それと蜘蛛男じゃなくて霧咲雀さんだからね」


霧咲の目は球筋を睨み、足がスタンドの壁にかかった。

蜘蛛走脚


「何すかあれは!!?」

「壁づたいに走ってんぞ〜!?」


子津と猿野の吃驚した言葉はそのままスタンドの
人間の心の声だった。


「バケツ振り回しても遠心力で水がこぼれないのと一緒ってこと?」


それでも有り得ない気がするけど…あんまり気にしない方が
精神安定には繋がるよね。


バシィッ


霧咲のグローブに球が収まった。


「スパイダーマンみたいだね〜!!」

「軽業師並みの身のこなし、負けてられないわ」

「対抗意識燃やすなよ」


監督からのツッコミに眉が寄る。


「私が一番自信持ってるのは守備です。そして観客を
飽きさせない動きだったら誰にも負けない自信があります」


だからこそこんな守備見せられたらこっちだって
負けてられないよ。

そして3人目の打者が良い金属音を鳴らした。

ギイィィィィン


「どうだ〜!!!」

「よーし気力全開じゃ〜!!」

「入れぇ!!このまま先制だ〜!!」


江戸桜のテンション最高潮。

センター方向の打球はこのままホームランに思えた。


「あちゃ〜こりゃ思ったよりデケェや」

「もうおバカ!考えナシにポンポン投げないの!
土本出番よッ!!」


「土本じゃんぷヨ!」


そびえ立つようにグラウンドにいる土本はワンタンの
指示通りに大きく跳ねた。


「ブゴオオオオ」


大きな口から響いてくる声。

その巨体からは考えられない高さのジャンプは両手いっぱい広げて
ホームランと思われた球をキャッチ。


バシィッ


「ぐほぉほぉ」

ズドオオン


土本がグラウンドに下り立った振動はまさに地震かと
勘違いしそうな威力を誇っていた。


「やっ、こっちまで凄い振動!!」


「大丈夫か!?」


体勢を崩すかと思った犬飼は思わずの体を支える為に
手を伸ばした。


「一応平気、ウーロン茶こぼれそうになったけど。
それにしても、話以上の無茶苦茶守備力高いチームね。
1点がすっごく重要になるよ、これは」


そして、セブンブリッジの圧倒的有利に
試合は進んでいった。


「これで9回表、これが最後でしょうね」


はさらさらといつものノートに要点を
まとめて整理していく。


やっぱり剣菱さん、紅印さん、影州さん、ワンタンさん、
雀さん、土本さんが超要注意人物ね。

残り3人は守備はいいけど打撃なら私達の方が上みたい。


「去年にも増して江戸桜に差をつけたな」

「惜しむらくは鳥居剣菱君が今回遂に登板しなかった事ですね・・・」


……十二支の試合考えると出てくれた方が嬉しかったけど、
体考えるとこれで良かったのかも。

二者択一できない状況が一番つらいんだよね。




















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