#2
「只今〜」
「遅かったね君」
「ちょっと知り合いに会いまして話し込んじゃいました」
は簡単に牛尾の疑問に対応しながら元いた位置であった
子津と犬飼の間に座った。
「猪里先輩、ビデオの調子はどうですか?」
「平気たい。ちゃんがこれ回さなくていいと?」
「ええ、私がやるよりも猪里先輩の位置の方が綺麗に撮れますから」
「あ、始めるみたいっすよ」
子津が双方のベンチから選手が出てくるのを見た。
「セブンブリッジの東蘭風監督に雀さん土本さんワンタンさん
あ、凪剣菱さんもでてきたよ」
「本当です」「はーいお兄様〜!!」
凪と猿野が同時に剣菱の姿を見て反応を返す。
「あれ?剣菱さん頭かかえて座り込んじゃった」
「お兄ちゃん今日は調子悪いんでしょうか」
ある意味、いつでも調子悪いんじゃないかな。
喉まででかかった言葉を飲み込んで、話題をそらす。
「やっぱり影州さんだったね、ピッチャー」
『1回表 江戸桜高校の攻撃です。1番銭貝くん』
マウンドに立ったのは緑色の髪をした人物でなく、
薄い紫の髪をもつ男。
『迎えるセブンブリッジ学院のピッチャーは3年中宮影州君』
「誰ですあの方は!?」
「凪ちゃんのおにーさんが投げると思ったのに」
辰羅川と兎丸、一斉に驚きの言葉が出てくる。
「セブンブリッジ名物の中宮の双子バッテリーで弟の方の影州さん。
試合のバッテリーはほぼこの2人なんだよ。
剣菱さんは秘密兵器で滅多にマウンドには上がらない」
おそらく、病状を考えての事だろう。まさか監督や仲間内にまで
病気のことを知らせていないなんて事はないと思う。
「って凪さん。お兄様は補欠なんすか?」
「いえ、兄ならほらそこですよ」
凪の眼差しの向こうにはファーストで手を振っている兄・剣菱がいた。
「何ファーストくらいで喜んで手振ってんすか!?
あんたエースで4番じゃなかったんすか!?
ファーストをキャッキャ喜ぶのはキザトラ先輩だけでいいんすよ!!」
「これ録音されてるからねお猿君」
これを見た後の虎鉄先輩の反応が楽しみだ。
「それにさ、あんまし影州さん見くびってると準決勝は
こっちがやられるよ。影州さんだって剣菱さんに
ひけをとるようなピッチングしてない」
大体埼玉地区は変わった人間多すぎなのよ。
今まで中身が変わってる人間は五万と会ってきたけど外見
まで奇抜なのは間違いなくこの埼玉野球がNO1になる。
さて、グラウンドに集中するか。
今度は何を仕入れてきたのか知らないけど、
あんたがアタシのリードを聞き入れた試しはないわ。
好きになさい。受け止めてあげるから。
フン、わかってんじゃねぇか…そうこなくっちゃ。
テレパシーじみたもので会話をつけ、
影州は体勢を整え、振りかぶった。
投げた腕は左。
「左のオーバースロー!!」
「へっクソ犬と同じかよ。たいした事ねーな」
「だからよく見てなさいって」
球は弧を描いてミットへと向かう。
しかし、もう1段曲がりが加わった。
ズバァン
「ストライ〜ク」
「あれって鹿目先輩の球じゃ」
「コラ〜何人真似しとんじゃい!」
「だからお猿君がそれを言うな。あれは間違いなく鹿目先輩の
剃刀カーブね。試合見られていたとは知らなかったけど」
それとも剣菱さんたちがビデオでも撮っていたのかな。
「だからと言って見ただけで投法まで分かるものなのですか?
ただ器用と言うだけでは済まされませんよ」
「そうよ。相当の実力がなければ無理。私もソフトの世界大会時で
似たような投手に当たった事あるけどあそこまで正確なもの
ではなかったよ」
2段カーブなんて超高度な技いきなり使ったら
普通指がいかれてしまう。
2投目が放たれた。球種は先ほどと同じ剃刀カーブ。
「もう騙されねぇぞ!オラアァァア!!」
ギイィィン
「あれま」
「さすがベスト4!2球目でもうミートしたっす!!」
「やっぱニセモノの球じゃの〜」
「さーて、鉄壁守備のお出ましよ」
打たれた球はショート方向。
ワンタンがつめてくる。
「ここは朕にまかせとくネ」
ぐるっとワンタンの体が回転した。
中華球雀 守備の局
役満技"大車輪"
「哈ッ!!」
1回転の側転をいれて球をキャッチ。
「アウト〜!」
「なんという身軽さ」
「側転でキャッチかよ。余裕だな」
「の迦楼羅といい勝負だぜ」
「確かに。私の迦楼羅は魅せる目的で無駄かつ派手にしてあるからね」
そういう意味で似てるってことなのかしら。
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