#45 黒撰












整列と挨拶を終えると十二支からも黒撰からも
互いに認め合う激励が球場に降り注ぐ。


「お前らよくやったぞ!!」「黒撰もナイスプレーだったぜ〜!!」



「テメーら次負けたら承知しねーからな」

「こうなったら絶対優勝してくれー!!」


それは戦った奴らも同じ事。


「まったくチョンマゲ小僧はよ〜手こずらせてくれたぜ」


猿野真向かい合っていた由太郎の肩をむんずと掴んだ。


「なんだなんだ猿野」


由太郎は何をされるのかと焦りをみせる。


「それにしてもよ。オメー見た目全然親父さんに似てねーな。
兄ちゃんの方は背ぇ高いけどオメーはこれから伸びてくんのかね
全身毛むくじゃらになってさも関羽みたいに」


「わ゙〜〜やだよおれそんなの!!俺お袋似だぞ!!」

「うん、私もそんなユタ嫌だ」


ベンチからも聞こえてくるその会話にどうしても
ツッコミを入れてしまう

猿野と由太郎は上着を交換し合い、互いに着る。


「そこまでは良いとして、沖君にはしらたきで
緋慈華汰さんに人骨って、それ酷いし!!
小饂飩さんとはとっても仲良し……ふーん、
やっぱり魁兄もそういうの興味あるんだ」


そろそろ猿野を連れて行こうと近寄ってみると
は猿野の手渡す春画、桃色小町に顔を火照らせる兄を
見て、どこか奇妙な目線でみる。


「ち、違う!誤解だ!!」


魁はそれに気がついてへと弁解をはかる。


「だって、魁兄もユタも何だかんだで男の人だしね、
私いるから何かと不都合あるんだろうし…あ、別に私の目に届く
範囲になければその辺しょうがないって分かってるからね」

「そのような不埒なことを女子が気にするでない!!」

「あ、否定しない。まぁ否定したらそれはそれで危ない…ま、
その話は置いておいて魁兄、今すぐ手診せて。
監督には言ってきたし、今すぐ手当てするから」




はまだ言い足り無そうな魁を引っ張り、
黒撰のベンチへと入る。手の負担が軽くなるように
処置をしてからシュルシュルと包帯を巻いていく。



「これで良し。家帰ってから続きするけど今はこれで大丈夫だよ」

「すまぬな」

「うん。ちょっと大変だったけど、
本当に良い試合だった。ね、ユタ」

は後ろで魁の治療を見ていた由太郎に顔を向けるが、
由太郎はビクリと肩を揺らした。


、ゴメン…俺と兄ちゃんの二人で甲子園連れてけるの
今年しかなかったのに…」


由太郎は悔しそうに猿野と交換した十二支の
白いユニフォームを握った。

それを見ては、由太郎と合い向かいになって、
ギュッと抱きついた。


「「「「!!???」」」」」


帰り支度をしながら様子をみていた黒撰メンバーは
その急な展開に目を白黒させた。


「ど、どうしたんだ!?」

俺から抱きつくのはよくあるけど
からなんて滅多にないのに!!


「ゴメンじゃなくて私から有難う」


耳元から聞こえるの声。

それはくすぐったくて、心地良い。


「黒撰と戦うの、不安だったけど想像以上に素敵な試合だった。

こんな良い試合見せてくれてありがとう。

貴方は私が誇りに思う義兄だよ」


少しだけ私より高い由太郎の背。

それなのにずっと私よりたくましい。


「大好きだよ」

「〜〜〜っ〜〜」


由太郎はを抱き返すが……。


、由太郎帰るぞ」


額に青筋浮かべた魁によって引き剥がされた。

由太郎はいい所を邪魔されて憤慨する。


「兄ちゃん邪魔すんなよぉ!!」

「でも私も十二支に戻らなくちゃ、その前に魁兄ちょっとかがんで」

「?ああ」


魁はその指示の意図は分からずに言われたままと同じ
位になるようにかがむと、今度は魁へと抱きついた。


「「「「「「今度は魁(ちゃん・君・さん)にか!!!!」」」」」」


「魁兄にもやらないと不公平だもんね。
魁兄も大好きで自慢できる義兄だよ♪」


少し悪戯気分を含んだ声色でそれを言って
魁の首にまわしていた手を離した。


「父さんには何もないのか……」

隅っこでは村中監督が子供達の仲の良い光景を見ながら
寂しそうにつぶやいた。

村中監督の隣にいて聞いていた沖はちょっと可哀想に思った。


「用は終わったし私も戻るね。
黒撰野球部の皆様、
今日の試合は敵ながら本当に素晴らしかったです。
私達はもっと勝ち進みますよ。
なんたってこんなに強い人と戦えたんですから」


お疲れ様でした。


はそれだけ言ってグラウンドを横切り、駆けていく。


「〜〜っああぁ!最後の最後に最終奥義発動かよちゃん!!」


小饂飩は顔を真っ赤にしてその場に座り込んだ。


「笑顔向けられて、反則だと思ったの初めてだ……」


沖は小饂飩の台詞に同意を示しながら右手で顔を
隠すように帽子をずり下げる。


「全てを照らし、全てを癒すあの微笑は天上の神々より
授けられし至宝のもの!それを垣間見る事のできた
この緋慈華汰はそれは美の狩人の代名詞を名乗って……」

長いので以下省略。


「あれをさ、十二支の人達ずっと見てるのかな…」


烏兎の疑問に答える声は1つもない。


敗者と言われても、あの笑顔を見れた自分達は違う意味で
勝者なのではないだろうかと、そんな思いを募らせながら
黒撰は球場を後にしていこうとした。


「あ、が救急箱置いていってる」


沖はベンチから退散しようとしたらぽつんと
取り残されている救急用具入れを発見した。


「まだバスは出てないだろ。誰か持っていってやれ」


監督が許可を出したのでいつもの由太郎と魁が忘れ物を
もっての後を追っていった。






















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