#42 最終打席
「プレイ!」
主審の合図で試合再開。
それと同時に子津が投球の動作に入った。
ズパアァッ
子津が投げた。
先輩達がやられた球…。の羅候とはちょっと違うし
俺がべんきょーできるのはこれっきり…。
や、やべぇ…俺こんな時にすげぇワクワクしてきたぞ。
絶体絶命。
それでも、由太郎は胸の高鳴りを抑え切れない。
地を走る燕が砂煙を吹き上げて姿を消した。
消えた!これか〜〜どこだ…どこいった!?
眼を凝らして球を捜していると上がってくる砂煙を
眼の端が捕らえている間に球は猿野のミットに入った。
ドパァン
「ストライ〜〜ク!!!」
審判の声を皮切りにして驚きをふんだんに含んだざわめきが
球場全部に広がる。
「どうだミヤ〜。あの球どう思う?(..)¢」
「さぁ〜言えるのはあそこが芝生だったら
楽勝って事くらいすかね」
芝生のバッターボックスは存在するのだろうか?
「これはアタシ達も他人事じゃないわよ」
「今のうちに俺達も対策を考えとかなきゃな〜〜」
華武とセブンブリッジも興味津々。
もちろん対戦している由太郎も…。
「おいおいおいすげぇな〜
まだ俺の知らねー球いっぱいあんだな」
やはり変わらず素直に燕への賞賛を送った。
の羅候と同じに見えんのに…。
でも、攻略法はそのまま使える!!
にやりと笑ったのは、解決法の手がかりを掴んだ事
だけなのだろうか。
「おめぇんとこホント面白い投手沢山いていいな〜」
「いいのか浮かれててよ。後2球だぜ」
猿野の言葉に、由太郎が反論した。
「後2球?そんなにいらねぇぞ」
「あぁ!?何余裕ぶっこいてんだコラ!」
「だってよ…これ要はもぐら叩きだよな」
あの日からずっと考えてた攻略法。
「俺得意なんだぜぇ、もぐら叩き」
由太郎の存在感が膨れた気がした。
「あの球の攻略法も見つけたというのですか!?たった一球で?」
「一球じゃないんだよね……」
気まずそうには口を開いた。
「どういうことだ?」
犬飼がわけが分からないと聞き返す。
「私がソフト辞めるちょっと前に魁兄とユタには見せちゃったのよ」
「さん…貴女なんて事してるんですか…」
「ゴメンなさい」
だってあの時はこんな事になると知る由もなかったんだよ。
「でも覇竹では無理なのは実証済みなの。
だから、一体どんな攻略法がユタの頭にあるのか…」
予想できない。
その言葉をは飲み込んだ。
2投目、子津が手を振った。
ここでもまた砂燕。
さぁ出て来いモグラ!!どこからだ!?
由太郎は砂煙の中にある影から球が浮き出てくるのを
捕らえた!!
「そこだぁ〜〜!!!」
ギイィィン
「だ…大根切りだと!?」
「垂直下ろし!その手があったか!!」
打球はサード方向、打球スピードは痛烈だ。
「シシカバ先輩!!」
猿野が焦りを含んだ声で叫ぶ。
「おうよ!いかせるか〜〜ッ!!」
しかし。
『抜けた〜〜!!!』
打球は獅子川の背後を走っていく。
「やめろ〜入るな〜〜!!!」
ドゴォッ
『ファール!!』
ファール宣告が、球場にしみ込んだ。
由太郎の打った球はアウトラインギリギリでファール。
「あ、危なかった。でも、次でホントの最後だよ。
さっきので感覚を掴んじゃったからユタが
これ以上ファールするとは思えない」
は大きく安堵の深呼吸をして目にかかる前髪を払いのけた。
冷や汗で髪が少し湿っぽい。
ベンチで見てるがそうなのだから今中心で踏ん張っている
子津はよりも汗をかき、玉を作って肌を伝う。
次は確実に真芯で捉えてくる。
そうなれば僕も犬飼君や鹿目先輩の様に…。
子津が由太郎の雰囲気に飲み込まれかかってる。
そしてそれに追い討ちをかけるように由太郎がさらに言葉を紡いだ。
「敬遠なんかすんなよ。後ろには兄ちゃんも控えてんだ」
八方塞と呼ぶにふさわしいこの状況。
目の前に立つ相手にはスキが見当たらない。
そう、と対峙してると錯覚を起こすような
大きい存在感と威圧感。
共に育ってきたからこそ、似てしまっている雰囲気は
子津を精神的に追い詰めていく。
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