#39 蘇りし燕







「ストライ〜〜ック!!!」


審判が大声で申告した。


「何だ今の球は〜〜!?」

「地面を這ってるかと思えば急に浮き上がったぞ!?」



今まで見たこともない球の出現に会場はざわめく。

アンダースロー…それもあれほどリリースポイントが
低いものは初めて見るな。

埼玉の首領、屑桐さえも初めて垣間見た燕。

その中で違う驚愕に襲われているのは3人、村中親子だ。


「やってくれおったわ羊谷め…そういう事か。

…燕…20年の時を経てまたもお前は俺の前に立ち
はだかろうというのか…」


村中監督はギリッと奥歯を軋ませた。


「20年前ではありません親父殿。2年前です


魁は父の言葉に訂正を入れる。


「あれ、羅候(ラゴウ)だ。中2の夏にが見せてくれた」


由太郎は驚きながらも間違いないと確信する。



「魁兄、ユタ。ちょっと見せてあげる。私のとっておき」


悪戯な笑みを浮かべて、長い黒髪をなびかせて投げられた
球は今までに出会ったことのないものだった。


「もっと色んなの開発中なんだけど
今回はこれだけね」

それから半年後、はソフトボールを辞めて帰ってきた。


「…ごめん、もうバットもボールも握れないや」


あれ以来、が投げたところを一回も見てない。


「拙者も由太郎も羅候には掠りもしませんでした」


「でもが羅候を教えるなんてな。

の球は捕り難さはある意味小町以上だから
俺でも捕るの一苦労だもんなぁ。

の球は俺かさんがいなかったらぶっちゃけ
暴投にしかならないし」


だからあんまソフトでも投手やらなかったんだろーな。

捕手が大変すぎるから。



捕手である由太郎が語ると何か真実味が強そうである。

続く二球目も燕が飛ぶ。


「ストライクツー!!」


またもや空振り。

手も足も出ない状態と言って過言ではない。


「ん〜やっぱナマで見るのが一番やな。
病院の中じゃ臨場感が足らんわ」


スタンドの入場口近く。黒豹とその友達灰狼が来ていた。


「急に合宿行くって言うたまんま顔見せにも来んで
いきなり試合に出とるやんけ、したら捕球どころか
燕そのもんのキレも段違いやがな…。
何があったっちゅーねん。

まぁ、ちゃんと俺でみっちり鍛えてやったんやし
これ位できてもらわんとな」


「えろうしごいてたしな〜。
見てるこっちが辛うなってもうたわ」


灰狼は黒豹の付き添いで何度となくその光景を
見たので少し目頭が熱くなってきた。


「阿呆、やるからにゃ奴らを何処へ出しても通用する
バッテリーに仕立て上げてアンダーの魅力を布教せんと。

これも親心っつーもんや」


子津の奴、やっとお仲間に追いついたんか。

後で祝杯の代わりにからかってやらんとやな。



黒豹は笑いながら3球目を観戦する。



子津が3球目を投げた。

クソッ…冗談じゃねーぞ今更そんなビックリボール投げてきやがって。

こっちだってもう後にゃ引けねぇってのによ…。


汗が首筋を伝うのが分かる。

打てる気がしない。


「うどん先輩!!!」


そこに由太郎の声援が聞こえてきた。

諦められねぇ!!


「心配すんなユタ坊!テメェの花道あ俺様が
たーんとこしらえてやっからよ!!」


歌舞伎打法 十八番"飛び六方"

小饂飩は後ろ足をダンッと蹴り上げ前に跳ねる。


"不動の見得""手間ぎ"


「浮上前に叩くか…でも子津君はそれに気づいてる」


球は地を這い、今度は砂埃を舞い上げた。

「私の計都と同じ種類である『砂燕』

砂塵は目の前を隠し、球を捉えるのは困難を極めるよ」

舞い上がる砂の屑は球道を隠し、バットから反れて

猿野のミットへと収まった。



ドパアァァン



「ストライクバッターアウト〜〜!!」


まずは1人目。
















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