#35 奇跡の道





『せ、セーフ!セーフです!!なんという奇跡だ〜!!!
偶然脱げたスパイクがファーストと交錯し、
間一髪セーフに!!十二支9回ワンナウトながらついに
同点のランナーがでました〜〜!!』


ファーストに滑り込んだ獅子川は鼻から顎にかけて
鼻血が流れる。しかし、役割を果たした男の顔だった。


「うお〜〜なんじゃこりゃ〜〜!!」

「よっしゃ〜〜流石は嵐を呼ぶ男だZe!!」


十二支は歓喜で球場を揺らす。

ベンチでは手を叩き合ったり拳を握って喜びを
隠す必要をどこにも持っていなかった。


「あ〜心臓に悪すぎ。でも、それが楽しいわ」


これがあるから野球はほんと魅力的よ。

は喜びもつかの間、マウンドで話し合う兄弟を見る。

魁兄、やっぱり無茶した。さっきの小町が凄すぎたし、
これから先は小町は投げられないはず……。


「ウサギ君、猪里先輩」


必ず回ってくる2人をは手招きをして呼んだ。


「どうしたのちゃん」「何かあったと?」


兎丸と猪里はそれを聞いての側へとやってくる。


「魁兄はもう指の酷使のしすぎで小町は投げてこない
はずです。直球1本に絞って行って下さい」

「え、そうなの!?よーし次は僕が行ってくるよー」


兎丸は勢いの乗って打席へと向かっていく。


「スバガキ頼んだぞ!」「こりゃいけるぞ」

「このまま続け〜!!」


『次は1番セカンド兎丸君』


にはもう気づかれちまっただろうな。

兄ちゃんがさっきのやり合いでもう小町を投げられないこと…。

でも、ここからは直球1本でやるしかない!!

由太郎はキャッチャーマスクを直して固定位置に戻った。

一投目が投げられた。


予想に反しはせず、直球。


"回転木馬"

グアキィィン


兎丸のバットには確かな手ごたえが伝わった。


「真芯でとらえた!!」「いったか〜!?」

「…っ!方向がまた悪い!!」


は球道の延長線上に待ち構える小饂飩の姿を捉えた。


「……あ」


兎丸の口から嗚咽が漏れる。


バシィ


サード小饂飩に真正面でキャッチされた。


「アウト〜!!!」


『俊足兎丸君もここで息の根を止められた〜!!』


兎丸はその場にぺたりと膝をついた。


これでツーアウト。もう後は残っていない。



…よっしゃ、後1人で俺らの勝ちだぜ皆。

次の2番でもいいし、そいつに最悪塁に出られる事があっても
一番怖え3番は今や控え選手に代わってる。

そいつを仕留めりゃ終わりだ。

このままいけばどの裏の攻撃を待つまでもなく黒撰の勝利!!



小饂飩は自分達の勝ちをほぼ確信している。

その間に、次の打者である猪里は素振りをするのだが、
その素振りがいつもと違っていて皆の頭に疑問符を浮かばせた。


「おいおい猪里先輩は何やってんだ?」

「ゴルフの素振りか?」


確かにゴルフのショットに良く似た下から上に突き上げる
かのような素振りである。


「大根先輩にお導きを〜!神様仏様蛇神様」

「え、そこに蛇神先輩入れちゃうの!?」


なんか死んだ人みたいで嫌だよ!


「ツーアウト…ここでのバントは無意味ですし、イレギュラーを
狙うにもすでに鉄壁内野陣には通用しておりません」

「そうなんだよね、でもあの素振り気になるよ。

イレギュラーもバントも絶対違うし、高く飛ばすため、
虎鉄先輩のBTSに近いと思うんだけど」

、正解だ。1年共、猪里がそれしかせん奴と勘違いするなよ」


監督は急に口を挟んできて私たちに釘を刺した。

つまり、1発逆転のチャンスありってことだね。













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