#31 背水








「かっとばせ〜猿野!!」「俺達の命お前に預けたぞ〜!!」


「てんごく君…君がここで決めなきゃ十二支はおしまいだぞ」


「遂に廻ってきたね、あの火の玉小僧に」


「おお…未だにあん時競りあった額の傷が疼きやがるぜ」


十二支どころか他校までも猿野に注意するようになる。


『5番サード猿野君』


「なんでズブ濡れになってんだ?さっきの人の服といい
変な気合の入れ方すんな〜おめぇら」


もっともな意見ではあるが、猿野はそれを気にしようとはしなかった。


「悪いがだーってろ。今はゴチャゴチャしゃべる気にならねーんだ」


猿野の表情にふざける様子は一切ない。

球場に溢れるスタンドからの声援さえも耳に入っていない様だ。

魁が振りかぶって、投げた。


直球!!


「うらああぁ!!」


ズガアァァァン

重い当たりの打球音。

球は横に反れてスタンドへと入っていった。


「ファール!!」

『凄い当たりだ〜!!軽々と三塁側スタンド奥まで
持って行った〜〜!!』


このバットやっぱりヒビ1つ入らねぇ。

体もビリビリしねぇ…よし、直球はもう怖かねーぞ。


手ごたえのある感触に猿野が細く笑んだ。

やんなおめぇ…やっぱこいつでいくしかねーか。


強き者よ…相まみえて嬉しいぞ。

だが拙者も負けられぬのだ。

この村中の名にかけて!!


魁は振りかぶり小町を繰り出してくる。

無数の球が打者である猿野へと向かってくる。

その猿野は。

こいつも一番後ろに!!そうかギリギリまで球を見定めるつもりか。

由太郎は猿野の立ち位置に蛇神と同じ理由を見出した。

バッターボックスを越えて球のブレは急速に衰えていく。

16,8,4、2

ここだ!!

ビュオオォォ

空振りの風を切る音。

パァン


「ストライクツー!!」

『ついに追いこまれました〜!!猿野君のバットは魔球小町の
前に空を切った〜!!』

「ハズレ引いちまったな。泣いても笑っても後一球だぞ。
これはもうクジ引きみてーなもんだ。スパッと引いちまえよ」


由太郎は自分の有利を疑わない。

これを乗り切れば黒撰の勝利は手中に収まる。


「勝負の仕掛けどころですね監督」

「ここは猿野と心中覚悟でいくか」


の言い分に賛成し、監督は手振りでランナーにサインを送った。

魁が最後の球を投げるため振りかぶるとランナー2人が
すぐさま走り出す。

『ああっと全走者一斉にスタートを切った!!勝負に出たぞ!!』


すべてを乗せた重い打球。

自身のすべてを信じきれるか?

すべてを賭けられるか?


「恐れるな、猿野天国!!」「打てッバカ猿!!」


と犬飼の悲鳴の怒鳴り声が重なった。


「うおおああぁぁ当たれ〜〜!!!!」


ズガアァァン

重い打球音が全員の鼓膜に突き刺さる。


「ショート!!」「ッヤバイ!!三遊間だ!!」


由太郎との声は同時だった。

打球を追いかけて迫るのは緋慈華汰と小饂飩。


「今こそ復讐の刻!エンジェリックブラッディークロス!!」

「八双跳び〜!!」


打球の線上に飛びついていく2人。


「「「「「抜けろ〜〜!!!!」」」」」


十二支のすべてが声を上げた。

それは、届いた。球は2人の背後を抜けていった。


「いよっしゃ!!今のうちに駆け抜けろ!!」

はワンバウンドを確認し、ホームに目線を向ける。


その時代走の平泉が本塁にスライディング!

『二塁ランナーホームイン!これで4−5!!
そして一塁ランナーも今三塁を蹴った〜!!』

牛尾も本塁に戻ろうとラストスパート。


「これ以上はやらせねぇぞ!!」


そして由太郎のミットに球が収まるのと同時に
再び牛尾がヘッドスライディングをしかけてくる。


バシィッ ズザザザァァ


またもや判別は微妙な所。の強く握ったこぶしは
汗独特の湿っぽさが出てきている。


「セーフ!!」

『ど…同点だ〜〜!!!十二支高校怪腕村中投手より
執念の3連打固め打ちだ〜!!8回表ついに5−5
同点に追いつきました〜〜!!!』


それぞれの思いは結果に結びついた。





















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