#23 止め




「十二支も折角ここまで0行進だったのにたった一発で
立場は逆転……偶然のワンチャンスでこれだ…だから
野球はわからんな屑桐よ」


菊尼が屑桐へと同意を求める言葉を出した。

下のグラウンドではホームベースに
ナイン全員で由太郎を待ち構え、
歓喜と共に小突きあっている。


屑桐は数秒の沈黙後。


「それは違うな」


菊尼の言葉を否定。


「黒撰はこの六回まであの犬飼の
ウイニングショットを全打者の打席を
犠牲にして研究し続けていたのだ。

確実に4番で叩く為に……。
いわばこの黒撰打線の爆発は
必然が生んだ逆転劇…」


屑桐の包帯のすぐ下で光る目は、
強者を認めた王者の光を灯している。

ふ、の兄弟であるだけの力量は持っているようだな。



一方、十二支サイドでは。

「ウサギ君大丈夫かな?」

「あっ柵から出てきたっす。一応ここから見ても
大丈夫そうっすね」


十二支ナインは犬飼の元に一旦集まる。


「犬君、ちょっと危ない」


犬君は一回得意の球打たれると立ち直りが遅いからな。

お猿君も自分のヘマに落ち込み気味だし、
このまま黒撰ペースずるずる引きずると更に
窮地になっちゃうかも。


さん、考え事してる時に悪いんすけど、
また猿野君が相手ベンチ側行っちゃってるっすよ」


「え!?」

子津の声では意識を元に戻して
黒撰ベンチの方を見てみる。


「チョンマゲてめー何人の技パクってんだ。
あれはなきこりの国の大棟梁様から教わった
一子相伝の殺人技なんだ。使いてぇなら
二次使用料払いな」

「お猿君の方が二次だよ」

いや、お義父さんいるから3次?

ま、あの位なら喧嘩にはならない
からほっといて平気。

でも、これでお義父さんにあの島の
事はバレたのは確実ね。

今度の打者は魁兄か、また怖い打者だから
って慎重になり過ぎないといいんだけど。




『次は5番ピッチャー村中魁君』

魁が打席に入る。

はやりまだ黒撰の逆転劇の色が収まりきらず、
黒撰には大きな流れを期待する余裕ができ、
十二支には試合を急く雰囲気があった。


それが、この勝負を決定付けたのかもしれない。


犬飼が初球を放った。


魁の足が大きく上がった。


「な…あの足の振りかぶりは!?」

「マサカリ打法か!!」


キィィィン


澄んだ打球音が球場に広がる。

久方の 光のどけき春の日に
        静心なく 花の散るらむ



『入った〜〜!!2者連続!!村中兄弟の
アベックホームランが飛び出した〜〜!!』






3−5 黒撰 優勢


















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