#21 確信
「守備の穴をつかれたっすね」
「まさにテニスのボレー。
ついに黒撰打線本領発揮といった所だね」
子津とは相手の力量を素直に認める他ない。
「次は沖君か……。ネガティブと共に霊が消えた
彼だったらあるいは……あれ、元に戻ってる!?」
バッターボックスに上がってきた沖は後ろに当初と同じ位の
怨霊とネガティブイオンを纏わせて立っていた。
『3番ライト沖君』
犬飼が投げた。そしてまたもや直球!
「急いではいかん犬飼!!」
蛇神の忠告むなしく。
恨み晴らでおくべきか…
"シェイムバント"
キインッ
「ツーアウトからバント!?」
しかもまたもや3塁へのゴロ。
ちゃっかり狙ってたな。
「クソ!俺ばっか狙いやがって!!喰らえーー!!」
猿野がファーストに送球。
「ツーアウトなんだから小饂飩さん潰しなさいよ!!」
上ずった送球でありながら虎鉄がジャンピングキャッチ。
しかしセーフ。そしてツーアウト満塁。
そして、最悪の場面で最悪の打者が登場する。
「あ〜〜もう!お義父さんに読み負けた!!
ずっと大人しいから変だとは思ってたけど
この満塁を作るためにこっちの研究しながら
なお且つ油断を誘ってたんだ!!」
は自分の頭をぐしゃぐしゃと悔しそうにかき乱す。
しかも次の打者は……。
『次は4番キャッチャー村中由太郎君』
「や〜〜っと廻ってきたぜぇ〜!!」
"物干し竿"には巻いてあった鉛はなかった。
ユタの超本気モード。
これを止められるかによってこれからの流れ
が決まるくらい大事な場面。
「こんなワクワクする試合は初めてだぞ!!!」
「ここは通さん……」
投手と打者、両者が対面する。
打者の後ろで辰羅川は由太郎の様変わりしたバットを
一目見てからため息を吐いた。
「そのバット…巻いた鉛全て剥がしたようですが
それが君の本気モードという訳ですか。要するに
今までの私共を舐めて取り組んでいたと…そういう事ですね」
辰羅川の気落ちした言葉に由太郎は慌てて弁解をする。
「ええっ!?ちょっと待ってくれよ。
俺はいつだって本気だぞ。様子見の事
言ってんならあれも本気のべんきょーだし」
は由太郎の言葉に賛同するかのように小さく頷いた。
そう、敵と本気で戦いたかったら敵を良く知る事。
それは野球においても大切な事。
相手を知る事も大事な戦略。
中にはそれを美学とまで語る者もいるほどに。
「俺はどんな相手とやる時だって手は抜かねーぞ。
ましてこんなおもしれぇ試合テキトーにやれっかよ」
犬飼もそれを黙って聞いている。
由太郎は辰羅川から視線を離し、投手である犬飼に向き直った。
「今だって全力で打席に立ってんだぞ。
このバットだって必要だと思うからこうしたんだ。
それはおめー達がホントにすげぇ奴らだからなんだぞ。
なんたっておめー達はの認めた奴らなんだからな」
そして、俺ら兄弟には出来なかった
を野球に戻すことを出来た奴ら。
そんな奴らに手なんか抜けるかよ。
スタンドの観客にも由太郎の声が届いていた。
華武のベンチでは桜花が楽しそうに笑いながら
御柳の頭を握力でぎりぎりと締めている。
「あやつ純粋に勝負事楽しみよるわ。
どっかの斜に構えたバカとは大違いじゃのう。んん?」
「いだっ!いだだだだ!!」
そして他の者は止めようともしていない。
軽いイジメだ。
「ま〜〜ピュアピュアちゃんね〜。目がキラキラしてるわよ」
紅印がハートマーク飛ばしながら由太郎を見る。
「うんうん。気持ちがいいね。見てて」
剣菱は選手としての心意気が気に入ったようだ。
華武だけでなくセブンセリッジ側でも中々好評。
その両者に1つの確信が生まれた。
間違いなくは村中の人間であるという事。
由太郎と……この二人の勝負を楽しむ姿勢は似ている。
そう思わずにはいられない。
「さあ来い!!」
試合を分ける打席が再開された。
「さーてっと、ユタの鉛が外れたって事は監督、
もう1つのあれが来ますよ」
「あれ…って、まさか!?」
監督はあれの意味が最初分からなかったみたいだが、
次には驚いて目を見開いていた。
「もしかして、監督気づいてなかった?
お義父さんはユタには伝授してますよ」
覇竹をね。
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