#18  推察






一方、の方は黒撰の作戦会議をしているところを
ずっと見つめていた。


「何かが始まる」


見たところユタが何か関係してるのは確か。でも打力を考えれば
ユタの名が上がらない訳が無いのだからなんのヒントにもならない。


「今はこのまま進めるしかないか」


小饂飩が打席に立った。

結局三振であったにも関わらず、小饂飩は笑っていたのが
違和感を強めていく。その笑みはどう見ても諦めたとは
かけ離れた挑戦的なものだから。


次の打者も次の打者もファールで三振。

球をしっかり見ているのに前に飛ばそうとはしていない。

4回表は魁が他を寄せ付けさせないで三者三振。

4回裏、由太郎がバッターボックスに上がると
ずっと沈黙していたが遂に動き出した。


「……監督、タイムを取ってもらえませんか?」

「何かあったか?」

「これから起こるんです」


「……分かった。お前を伝令にするから自分で言ってこい」


監督はと数秒の睨み合い後、頷いて全員を
マウンドに集めさせた。




もマウンドへと上がってきた。

「気づいた?全打者が飛竜を出そうと必死になってる」


キャッチャーで一番、打者を見る事の出来る
辰羅川に目を向けて確認を取った。


「ええ。前の回の景気良い大振りとは裏腹に
消極的にファールで粘っていますからね」

「ねぇ、話が見えないんだけど、どういうことなの?」


兎丸がじれったそうに明確な回答を急がせる。


「「飛竜を研究されている」」


と辰羅川の声がそろった。


「どうする?作戦に乗って真っ向から飛竜で通すのも手だけど、
あんまり多投したくないのが本音でしょ?」


はバッテリーの犬飼と辰羅川に目を向けた。

この辺は投手としての経験があるだから
こその見解ともいえるだろう。


「飛竜ってさっきからの球の事Ka?
確かに見せっぱなしにするのもNa−」


虎鉄を始め、何人か唸って頭を悩ませる。
「なにへタれた事言ってんすか」


猿野が一歩進み出てきた。


「飛竜ってのはちょっと見られた位でもうパカパカ
打てるようになるもんなのか?そんなんじゃ今後
それ投げる機会永久に来ねーんじゃねーの?」


犬飼の神経をつつくように猿野が言葉を向けてきた。

それに米神をピクリと動かして犬飼が噛み付いていく。


「なめんな。こいつは来るとわかってても打てん球だ…。

出し惜しみするつもりはねぇ。それに多投してもがいれば
大方次に響くことはねーんだから問題はないだろ」

犬飼は猿野を睨み付けてからへと目線を移した。

「あら?私のマッサージ技術もここまで信頼してもらえれば
本望ね。ありがと。てなわけで、お猿君と犬君は
飛竜を使いたいって事ですが、他の人たちはどうですか?」


犬飼の言葉に少し嬉しくなってお礼をいってから
他の意見は無いかと全員を見回した。


「そうだね。他の選手はともかく4番には小技の組み立ては
ことごとく通用していない。必ず大きく当ててくる。
飛竜ナシというのは現実問題厳しい所まできてると思うよ」


牛尾の意見はもっともだと全員が頷いた。


「私も牛尾先輩の意見に賛成です、決まりましたね」

「そうですね。4番以外はなるべく打たせて取り、
研究の機会を減らすしかありませんね」


全員の納得を得たところで試合再開。

辰羅川がキャッチャー位置に戻ってくると
打席に取り残されていた由太郎が話しかけてきた。

「え〜〜と、ちょっとだけ聞こえたけどもう飛竜は打ち止め?」

「さぁ…どうですかね」


素っ気無く言い放って辰羅川はミットを構えた。

犬飼が振りかぶった。

手から目一杯の力で球が放たれた。

しかし、止まって見える。飛竜だ。

やっぱりだ。止まって見える。


「ストライクバッターアウト!!」


振る事なく三振。とりあえず一番怖い
バッターを退けた事で一安心した辰羅川。


「いくら目を凝らしても無駄だと思いますよ」


まだ打席に立っている由太郎に声をかけるが
耳に入っていても脳には到達していないようだ。


あ…これってもしかして。


「…にししっ見えちった。じゃぁ次は準備万端で行くからよ〜」


子供らしい笑い声をあげて由太郎はヘルメットを脱ぎながら
ベンチへと戻っていく。


「え…準備とは?」


辰羅川は聞き捨てなら無いと引き止めて聞きにかかるが。


「待ってろよ。次からガンガンかっ飛ばしに来っから」


返って来たのは宣戦布告。


「なっ!?」


早い!もう飛竜を見抜かれたというのか!?

いや、しかし………。

辰羅川の自問自答は犬飼が声をかけるまで続けられた。



















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