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ドリーム小説
#10 覇竹発動
パアァン
沖のダウナーシンカーが吸い込むように
ミットに収まり乾いた音を鳴らした。
「ストライクツー!!」
「あ゙〜〜もう追い込まれた!!」
「どんなに遠くへ飛ばせても当たんなきゃ意味ねーぞ!!」
期待していたのに振ることなく2ストライク。
十二支では最後の1球が頼みの綱だ。
「よくもまーグニャグニャ曲がるもんだな。
テメーの球も……。じっくりいかせてもらうぜ」
そういってボックスの最奥に足を据えた猿野。
出来うる限り球筋を見極めるつもりなのは明白な行動と姿勢。
「お?なんだ慎重だな〜。ホームランか三振か勝負してみねぇの?」
由太郎の問いに猿野は答えなかった。
馬鹿力なんて当たんなきゃ意味ないし。
これでくたばってよ。
振り上げた。コマ送りで球筋を見てもまだ変化していない。
ボックスに入るかどうかのところで、グググッと曲がった。
デビアスシュート!!
「そんなギリギリまで見定めていたら見逃し三振ですよ!!」
辰羅川がベンチから立ち上がって激を飛ばす。
「それが出来るのが覇竹なのよ」
は打席から目を話さない。
子津が合点がいったと冷や汗を垂らした。
「居合い切りの如きスイングスピード」
"剛の秘打法 覇竹"
風が竹を振ったように散り散りになる。
打球音がかき消される。
その瞬間、一同が球を見失った。
「…なっ!?球がねぇ!!」
キャッチャーマスクをはずして由太郎が球の位置を探す。
野手全員が当たりを見回した。
「凄いよ、まさか本当に1週間で体得するなんて」
あの速さは、目にも止まらない速さっていうやつかな。
の目線はレフトへと移された。
それと同時に鐘を鳴らしたような音が球場全体を包んだ。
ドオオォォン
球はレフト後方の壁に激突して空中に跳ねた。
そこで、やっと球がそこにある事がわかった。
「ランナー全員走って!!!」
はランナーに指示を出した。
それを聞いたランナー3人ははっと意識取り戻したように
各ベースに向かって走り出した。
『なんという打球だ〜〜!!観客の誰が反応出来たでしょうか!!!
打球はライナーでレフトのフェンスに突き刺さった〜〜!!
今、ベンチからの指示でランナーが遅れてスタート!!』
猪里がホームベースにスライディング。
『ホームイン!2−0!!』
2・3塁ランナーもセーフで再度満塁。
『あまりのスピードでランナーまでスタートが遅れて
一点止まり!!しかし、なんという打球なのか…
もう少し高ければ確実にスタンドインしていた事でしょう!!』
アナウンサーの解説に力がこもっている。
観客もあまりの凄さに熱が上がる。
"覚悟"を決めたかてんごく君。
もっともっと本気を見せてみろ。
そして早く登ってこいよ…
この俺との戦いの舞台に。
ちゃんがチャンスを与えた意味を作り上げろ。
剣菱は武者震いをしてしまうほどに
その打球に強さと覚悟を見せ付けられた。
そして、が猿野を再入部させたその真意も、
少しづつ納得のいくものに変化していく。
「あそこまで引き付けてよく間に合ったなぁ。
こんなちゃっちいバットで」
由太郎は猿野の木のバットに手をかけて持ち上げた。
するとそれは気が抜けてしまうほどに軽い。
力を加えなくても難なく振れてしまうだろう。
「うへぇ何だこの軽さ…前使ってたよりもっと軽いじゃねーかよ」
片手で手首の力のみでぶんぶん左右にそのバットを
振ってみるとさらに自分のバットの重さとそのバットに
軽さに違和感を感じてしまう。
「スイングスピードが更に増したね」
は面白いものが見れたとご満悦。
元々は猿野が伝説を破った事から劣等感を
感じていたが今ではそんな事なんでもない
と部員の成長を素直に喜べる。
「傍目には重い竹を振る事で筋力アップを
している様に見えたけど、よくよく考えたら
竹の葉なんて早く振らないと
中々落ちてくれるもんじゃない」
子津は特訓メニューですべての葉を落とす意味を
やっと知る事が出来た。
「それで重い竹に慣れた後、あの超軽量バットを使えば
さっき見たいにギリギリまで球の見定めが出来る」
その後の解説をが引き継ぎ、覇竹の真の秘密を
露わにした。
その後は虎鉄のファールフライで1アウト。
「っち、敵さんのピッチャー立ち直ってきたZe」
虎鉄は苦々しく思いながらベンチへと戻ってきた。
「これ以上は点を取らせられないって事ですね」
司馬のゲッツー崩れの間に蛇神が生還。3−0。
「蛇神先輩、お疲れ様」
蛇神はからドリンクを渡されありがたく手に取った。
「あの投手、陰鬱な空気を背負っているな」
沖のマイナスイオンの正体の怨霊の事だろう。
「ちょっと、量が増えてますよね」
3点先取は堪えたか。
でも、量と変化球のキレが
比例してるのが気になるところね。
辰羅川は打ったものの3塁ゴロでこれで3アウトチェンジ。
ついに黒撰の攻撃に移る。
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