#05 試合開始




『一回表 十二支高校の攻撃です』


球場の至る所に仕掛けられたスピーカーから
アナウンスが流れてくる。


十二支はベンチの近くで円陣を組んで
キャプテンである牛尾の話を聞いていた。




「みんな、一回戦僕らが抜けたあの日から
よくここまで頑張ってきてくれた」


最初は感謝の言葉。3年でチームを引っ張るべき人間
がいなくても彼らは良く戦い、そして勝利してくれた。


「2回戦はTVで観ていたよ。そして、
退院した日に十二支の校舎も…」


それは、自分達の誇りの象徴を失ったということを
知っているという事。


はそれを聞くと誰にも気づかれないように
自分の服のすそを掴んだ。


自分と同じかそれ以上にもしかしたら牛尾は
時計を、野球部の伝統を大切にしていただろうから。


「今回の試合は甲子園を目指すステップの一つだが、もう一つ…。
各々が現十二支野球部員としての尊厳を守り抜く戦いだ」


彼の低いがとても聞きやすい声が紡ぐ言葉は1つ1つに
重さを感じさせた。


責任という重責。


守り抜くという重責。


重さはいたるところに乗っかっている。


「僕達は決して過去のおこぼれでここに
立っている訳じゃない。新たな十二支の歴史は
僕達自身の手で刻むんだ」


そう。それを知るために時計はその使命をまっとう
してその長い歴史を閉じ、新たな道を開いた。


彼らは今まで知る事のなかった裏の歴史も知った。

それを体験もした。


温故知新。


彼らが、新しい歴史を作る。



「いってらっしゃい。私が信じたものをちゃんと
守り抜いたあなた達なら大丈夫だから」


は、少しの間忘れてしまった大切なものを
呼び起こした彼らに笑顔を送って激励を投げかけた。


私が、一番信じている家族とその人達の大切な仲間。


私に一番大切なものを呼び起こしてくれた部員。


だからこそ、分かる。



この試合が私のすべてを騒がせ、奮い立たせる
ものを見せてくれる事を。




「頑張ってきなさい!!あの人達は私の知る中で
一番手ごわい相手だよ!!」


「「「「「おお!!!!」」」」」



大きな声でいつもの様にと元気良く凛とした声を張り上げて
選手達を送り出した。


これがあるからこそ、始まる時の気合が入る。





「……なんか何気にから黒撰が華武より上
発言出てきませんでした?」


手にあごを乗せながら御柳が拗ねた声で周りの先輩
へと投げかけた。その顔はどう見ても面白くないとしか
語っていない。


「これでの言った『鷹』が黒撰だって事は間違いないな」


菊尼が練習試合に言い残した抽象的な単語
が理解できたとメガネを上げる。


の兄貴と親父の学校じゃったら、一番良く知るから
こその評価かもしれんのう」


桜花が大きな体を丸めて話すのに聞きやすい体勢になる。


「だったら、後で知らしめればいいだけの話しだ。
は俺達の力を本当の意味では観ていないのだからな」


おそらく、セブンブリッジも同様だろうがな。



龍と喩えられた者達は今、傍観者としてこの球場に存在した。

そして、黒撰が全員守備位置についた。

試合開始。


















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