#17 第3修練




「っいっしょと!!」


ギリギリと木材をまとめて縄で縛りあげるのは

次の第3修練の準備中だ。


「軍手貰ってきて正解だったね。にしても、
こんな特訓を父さんとお義父さん達はしてきたのか」


これに耐えて、いっしょに練習してきた仲間を置いて、
甲子園の優勝旗を手にした。


「それは、確かに最高の喜びを生き残りには与えた。
でも、落ちた人はどうなんだろう」


これは入部試験の振り落としとは次元が違う。


「歯がゆいな」


の独り言は誰も聞いてはいない。

周りにあるのは今まで作った馬と、風に揺れて
ささめく木々の音のみ。





第3修練終了後、また私は脱落者を迎えに行った。

そこには馬の前でうな垂れる者達が声を殺して泣いていた。


「ウサギ君」


その中の1人、兎丸には肩に手をおいた。


「あ…あれ?ちゃん、何でいるの?まぁ、いいや、
あのね…僕……脱落しちゃった。もう、野球出来ない」


がいる事に気が付いても、顔を向けないでそのまま話す。




「なんか…すごい空っぽなんだ、僕の中。

今までの自分が、どっか消えちゃったみたい。

僕が、もう誰にも必要とされなくなったって……。

そう、死んだみたいな気持ちなんだ……。

ちゃんは、平気なの?僕等みたいに、

実力じゃなくて女の子ってだけで、公式試合に出れないのに。

どうして、あんなにいつも笑えるの?悔しくないの?!」


兎丸から投げかけられる問いは、悲痛な気持ちを
これでもかと言うほど、へと伝える。


「私は、諦めたくないだけだよ。チャンスは、
自分が望まなければやってこない。やりたいと願う人にこそ、
チャンスは増えるし、やってくる。ウサギ君にも、チャンスはある」

「どこに?僕は……もう野球部員じゃないんだよ!?」


兎丸は声を荒げる。

自分にはもう何も残されていないと言うかのように。

はっすっと手を差し伸べる。

雄軍争奪戦の時の子津にしたかのように。


「私はやりたいと思う人にこそ、チャンスをあげる。
手をとってもう1回立ち上がろう。
兎丸比乃はいらない人間じゃないんだ」


は、兎丸の怒鳴り声にも怯まず、
変わらない調子で兎丸に言葉を渡す。

兎丸は、面食らった顔をするが、数秒の沈黙後、
泣きそうな顔で無理して笑っての手をとって立ち上がった。


「まだ、チャンスはあるの?」

「これから掴むのさ」


そして、は今度は鹿目に近づく。


「鹿目先輩行きましょう」

「僕には、もう行くべき場所はないのだ。
僕を1人にして欲しいのだ」

「それはできません」


きっぱりは鹿目の願いを切って捨てた。


「先輩、ここで諦められるほど、先輩の3年間は
軽いものじゃないのは1年の私でも分かります。

まだ、先輩は立って、道を進める力を秘めてる。

だから、無理しても立って欲しい」


馬の縄を鹿目から外して、重りをなくす。


「ほら、手を掴んで下さいよ。そんな所で座り込んじゃうと
先輩の持ち味が出し切れませんよ」


兎丸の時とは違った、優しさ。

鹿目には、包まれるような優しさよりも、
少しくらい棘を持った物言いの方が神経を逆撫でして
喰らい付いてくれると考えているのだろう。


「……、お前いつから僕にそんなに偉そうになったのだ?

僕はこんな所で止めたりしないのだ。

ちょっと休みが欲しかっただけなのだ」


それは、当たっていたらしく、鹿目はよろよろと立ち上がった。


「それは済みませんでした。

じゃあ後5人も引っ張り起して進みましょうか」




は日向・五本・平田・小出・本庄にも立ち直るよう呼びかけ、


森を掻き分けて進む。




こんなに仲間を置いていくほど、生き残り達は馬鹿じゃないでしょ。

だから、私は信じてるんだから。

私の目は節穴じゃないんだから。

信じて、只待つなんて大人しい事はできない。

待っている間もあなた達が快く迎えられるよう準備してあげる。

だから、頑張って欲しい。


















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