#15 脱落者の場所
雨と雷も段々と収まってきた頃。
キイィと、棟梁が小屋に戻ってきた。
「じじいさま!!」
こきりは棟梁の姿をみると、その大きな体に抱き付いた。
「悪かったなこきり。雷が鳴ってる所に一緒にいてやれなくて」
強面の顔からは想像もつかない程に緩んだ笑み。
それはこの2人の関係がとても微笑ましいものだと
いう事を如実に語っていた。
「お姉ちゃんがいてくれた。だから平気だった」
「そうかそうか、、こきりが世話になったな」
「全然平気ですよ」
「にしても、こきりがこんなに早く人に懐くのは初めてだ。
お主は、本当に母さんと父さんの良いとこ貰って生まれたな」
「……そう言ってもらえると、嬉しいです」
の両親が、どんなに人に好かれていたか分かって。
自分は両親をなんにも知らない。だからこそ10年以上たった今でも
沢山の人に覚えてて貰えて、それは娘として本当に嬉しい。
「これより、部員達を宿に案内してくる。は脱落者4名を
例の家へと連れていけ」
「了解しました」
3人は家を出ると、途中で吉井・吉良・広川・津久井
を向えに行った。
「先輩方」
が声をかけると4人は驚きながらこちらを向いた。
「!?」「も来てたのかよ」
「ってか、何でもいるんだよ!?」
「俺等港に戻されるんじゃなかったのかよ!!」
「私はサポートですよ。着替えて私の後に
付いて来てください。道すがらお話します」
は後ろを向いて4人分の着替えを渡した後、
懐中電灯を持って先頭に立って歩き始める。
4人はそれに大人しく着いて行った。
「……てことで、先輩達が除籍されるかどうかは
最後まで生き残った部員達にかかってる訳です」
はこれまでの流れをかいつまんで話して聞かせる。
「俺等は1週間どうすんだよ」
と吉良がこれからの自分達の過ごし方に付いて質問を入れる。
「これから向う場所で寝泊りしてもらいます。
朝は5時に私が起しに来ますので、その後、自然を生かした
特訓メニューをして貰う事になりますね。着きました。
ここが1週間の生活の場です」
着いた先は窓ガラスは破損し、いたる所に
蔓が巻き付く、言ってしまえばオンボロな小屋だ。
「私はこのまま棟梁のログハウスに戻ります。
明日からまた忙しくなるので十分睡眠をとって下さい」
「こんな所で過ごすのかよ」
「先が思いやられるぜ」
愚痴を零す先輩達を放っては元来た道を戻る。
「あ、」
「何ですか?」
は名を呼ばれ、振り向く。
「その、1人で戻って、平気なのか?
合宿の時、夜の森が怖かったって言ってたし……」
広川が頬を掻きながらに言う。
「御心配ありがとうございます。
この位の距離なら、走ればすぐですよ」
「つまり、怖いんだな」
「…・・・はい」
大人しく本音を暴露する。
「だったらちゃんと言えよ。俺等だと頼りないかもしんない
けどさ、雄軍だけじゃなくて賊軍の練習もしっかり見てくれる
には皆感謝してるんだぜ。こういう時位は頼って利用しろよ」
ポンと肩に手を乗せられる。
「ありがとうございます。じゃあ、途中までお願いします」
やっぱり、皆一緒に甲子園を目指したい。
その思いを強めて、1日目は幕を閉じた。
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