#13 極楽島



ザー ザー 


私と山嵐さん―本人は棟梁と呼べと言った―を
乗せて船はドンドン沖へと進んでいき、
小さな島にたどり着いた。


港もすでに見えなくなって、太陽が海に飲み込まれ、
夕焼けの赤が海に映ってどこかの風景画のようだ。



。お前さんが島にいる事は生き残り衆には秘密だ。

その為、本当の裏の仕事に徹してもらう。そして、
表はワシの孫娘のこきりが手伝いをしてくれる事になった」


棟梁は大きな綱を持って肩に担ぐ。私はそれを見て、
同じように棟梁の綱より少し細めの縄を何本にも束ねて担いだ。


「そのこきりちゃんは今何処に?」

「ワシの建てたログハウスで部員達の寝床の用意をさせている。

さて、行くか。これが第2の試練『鯉のぼり』。
この綱の張替えをせんといかんのでな。
大元の綱の張替えが終ったらワシは船を戻して部員を向えに行く。
今日中に20本の縄を繋ぐのじゃ」


目の前にそびえ立つのは双子のように向かい合う大岩。

確かに今張られている綱はボロボロで今にも切れそうだ。


「私は棟梁の反対の岩に登ればいいんですか?」


綱の端っこを落ちないように腰に巻きつける。


「そうじゃ。一気に行くぞ」

「はい!!」


それを合図にと棟梁は岩を登り始めた。


綱が重りになって大変に登り難い。

岩に必死にしがみ付いて1つ1つ慎重に登る。


「あと、もうちょっと」

ガシッ


頂上に手が届き、上りつくとはいつの間にかに
体中が汗だくになっていた。


「はぁはぁはぁ」


息を切らして酸素を取り入れようと呼吸量が増える。

棟梁も登りきり反対側の岩で座っているをみる。


「ほぉ、流石、鷲坂の娘じゃの。本当に一気に登り
切れるとは思わなかったわい」


これは、強靭な腕力と握力を持っている証拠じゃの。
脚力も同い年の男子と比べても上位だろう。
女でなければ野球界に大きな旋風を起しただろうに。


棟梁はまだ知らない。

を中心にして高校野球に大きな論争が起きている事を。


、休む暇はもう終わりじゃ。
次はこの綱を岩に巻きつけるんじゃ」

「了解しました」


そして、落ちないように巻きつけ終り、縛ろうとすると。


「縛るのはまだ先じゃ!!今度は端っこを持って
古い綱を渡ってこっちに来い!!」


「うそ!?」

こ、この今にも切れそうで危なっかしい綱を?


こりゃ、筋力と早さの勝負だな。

そう無茶な事を言われても

は肩をぐるぐる回して、準備する。


「では」


ガッシと古い綱を両手で持ち、ターザンの如く綱を渡って行く。

その間にも古い綱はミシミシ不吉な軋みをの耳へと運んでくる。


お願いだから渡りきるまで持って!!

右手から左手へ。左手から右手へと移る反動にも拍車がかかる。


そこに。

ビキビキ

っと、とてつもなく恐ろしい音がした。

ヤバイ!!後もうちょっと!!

ブチッ ガシッ

という音が同時にして、は隣の岩にたどり着いて、
頂上に登った頃には、古い綱は海に浮いていた。


「あ、危なかった……」

「思ったよりも耐久性がなかったのぉ。

まぁ良いわ。これで繋げば大元は完成じゃ」


棟梁は何事もなかったかのように両端を繋ぐ。


「こづなつなぎにすればそう簡単には結び目が解ける事はない。
そっちの縄を結ぶ時はもやい結びにするんじゃ」


※もやい結び・こづなつなぎ共に本当にあるロープワークです。


にもやい結びの仕方を教えた後、
棟梁はすぐさま船へと戻り、出発して行った。


はすべての縄を結び終わると岩の頂上に腰掛け、
休憩を取りながら大きな海を見つめる。


これは、辛いわ。
ぶら下がっているだけなのに本当に体力を使う。
皆は、耐え切れるかな。

それでも私が直接手助けする訳にはいかない。

皆が、大事な事に気付く事。

それが一番の修練なのかもしれない。


















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