#12 死地
監督と私は十二支を出た後、野球部員に教えた
港と同じ方向へと向っている。
「監督、ううん、羊のおじちゃん。
港で一体何処に行こうっていうの?」
確かに黒撰を倒すには並大抵の努力では無理だ。
合宿をするのも分からないでもない。
しかし、嫌な予感が頭を横切る。
「お前は……司さんや村中から黄金時代の
強化合宿の話を聞いた事があるか?」
羊谷の声が、強張っていた。
「……お義父さんからはない。でも、父さんが……」
『、一緒に戦ってた奴と一緒に戦えなくなるのは
……本当に辛いんだ』
「…って言ってた時、本当に寂しそうだった」
もうとても古くて、でもいつまでも残っている父さんの顔。
もう、良く覚えてないから確信はないけど、
その時、父さんは少し黄ばんだ白いアルバムを開いてた。
ウチで白いアルバムは1つだけ、
高校時代の野球部のもののみ。やっぱり…
「…黄金時代の何かが関係してるんでしょ?」
「……ああ、そうだ。お前の言う通り、黄金時代の
闇の歴史をあいつらは体験しなくてはならない」
ぽつり ぽつり
羊のおじちゃんは、20年昔の出来事を話した。
今の十二支のように、黄金時代の監督、山嵐監督は
羊のおじちゃんや、お父さんと同じ時に就任したそうだ。
それまで、名もない十二支を束ねていた父さん。
「俺等は、司さんがいたからこそ、十二支に入学した。
黄金時代の土台を作ったのは、間違いなく司さんだ。
だからこそ、人一倍、あの合宿を辛く思う所があったんだろう」
試練に落ちれば………除籍。
退部でなく……そこにいた事すべてを消される、除籍。
「そんな…………」
存在した事そのものを否定される。
「そんなの……嫌だ」
私は、これ以上仲間を失いたくない。
「……着いたぞ」
目の前に見えるのは
赤とオレンジの暖色と青と薄紫の寒色が混じった空。
その色を反映した海に浮かぶというよりそびえ立つ船。
そこには、お義父さんに負けない位の巨体の老人がいた。
「来たか、羊谷」
「お久しぶりです。山嵐監督」
「山嵐監督?」
どこかで聞いた事があるような……。
「その娘は?」
その老人がこちらに目線を向けてきた。
「司さんの娘です」
老人はゴワゴワの髪に隠れる眼を大きく見開いた。
「鷲坂のか?そうか、でかくなったな。
顔が奥さんと似てきたじゃないか」
大きな手をポンと私の頭へと乗せた。
もしかして……。
「くろーおじいちゃん?」
の両親の命日に行った時、会った事がある。
あの時はただ、父さんと自分の恩師だとお義父さん
が教えてくれただけだった。
「覚えておったか。まさか鷲坂の娘が十二支に行くとはの・・・」
「あなたが十二支黄金時代の監督だったのですか」
今、言わないと……。
「お願いです。試練に落ちたものを除籍しないで下さい」
彼等の一体何人が落ちるか…しかし、黄金時代でも半数は
落ちた試験。彼等と一緒に戦いたいのに・・・。
「彼等は、全員いてこそ力を発揮します。
彼等は……1人1人が必要です」
の震えている声とは裏腹に、顔はしっかり
山嵐を見ていた。
「……そのまま聞き入れる訳にはいかんな」
山嵐の回答は、の期待とは違うものだった。
「でも!!」
それでも噛み付いていくの言葉を大きな手で止める。
「条件だ。合宿中、生き残った者達が何も言わずに
公式試合に臨めば、脱落者はそのまま除籍。
言えば、その内容によって考えてやろう」
2人の意見の中間地点とは言いがたい。
の意思をしっかり汲んでくれた提案だった。
「それで良いです。合宿をお願いします」
は深く山嵐にお辞儀した。
「オメーも行くんだよ」
頭を垂れていると上から唐突に羊谷のツッコミが入る。
「は?監督、あなた今何とおっしゃいました?」
聞こえはしていたのだが、もう一度聞き返す。
「だからは棟梁の手伝いと脱落者の面倒を見るために
ここに連れてきたんだよ。お前が合宿に来ている事は
部員達には一切知らせないからな」
裏方に徹しろって事か…。
「わかりました。じゃぁ凪には電話いれないと…」
「おう。それが終ったら1週間分の食料の積み込みするからな」
「了解監督」
この1週間、波乱の日々になる。
部員は今まででも最大の試練になるだろう。
「頑張りな」
私は少しでも支えるられるようにするから。
NEXT