#10 20年前の選手





3人が痛みから立ち直ってきた頃には
村中父は監督と話に花を咲かせていた。

…なんとも表現が人物に似つかわしくない。
盛り上がっていたが正しいのだろう。


「へへへお構いなく、それよりもあの時計は親子仲良く
ぶち壊してくれたんだからよ、この際元プロの財力で
立派な時計に買い替えよーぜ、俺が口きいてやるからよ」


悪徳商売のセールスマンのように笑う監督に
不振な目でみる部員がいても全く可笑しくない。


「信用できんな。テメーに金渡すとそのまま競馬に
消えそーなんだよ。
にやらせるから問題ねーだろ。
どうせ部費の財布もかその辺が握ってんじゃねーのか?」


よく分かっていらっしゃる。


「うっせぇさっさと弁償しやがれこの大振り野郎が!!」


図星を指されて息を荒げる監督。


「まぁまぁ今度飲みにいこーぜ。OB皆誘ってよ」

「よーしテメーが幹事やれよ。おごりだからな」


笑い合う旧友同士をどうしてこうなったのか全く分からない
部員はそれを見ているしかない。


「なぁ監督あの村中さんといやに親しそうだぜ」
がらみの知り合いじゃねーか?合宿の時の説明で、
のお母さんが監督と幼馴染だったって言ってたから」


「…懐かしいな。あの時計が止まってもう20年が経つのか」


落ちてしまったが跡の残る最上部を見る。


「あの頃の俺とオメーは志しを同じくして共に戦った
チームメイトだったよな」


ピッチングの羊谷。

バッティングの村中。

2人は黄金時代を支えぬいた戦友だった。


「今やお互い一国一城の主。引き連れてるチーム
どちらが強いか勝負というわけか」


今では向かい合い、強敵となって母校に立っている。


「そう言うことだな遊人よ。じゃぁな、俺が手塩にかけた
黒選にテメーの息がかかった十二支がどこまで張り合えるのか
楽しみにしてるぜ。後、


「何?お義父さん」


話がそれてに向かう。


「今日は家に帰ってこない方が良いかもしれんぞ。
何処から突き止めたかは知らんが家にまで報道陣が
集まって来とるからな」


「うわ、やっぱり?」


ピッチング見せた時から覚悟はしていたが……。


「んじゃあ友達の家に泊めてもらった方がいいかな?
凪、家に泊まらせてもらってもいい?」


は少し離れている凪へと声をかけた。


「うちは全然構いませんよ」


答えは快い了承。それに安心する


良かった〜。駄目だったら

頼まなくちゃだったよ。


「ちゃんと毎日連絡は入れるんだぞ」


「オイオイオイそこのゴンザレス!
このバットも何とかしていきやがれ!!」


ずかずか蛇神のバットの片割れを持って進み出た猿野。


「バットなら由太郎のをやろう


にこやかに自分の子のバットを差し出して変わりに
しようとする父、紀洋。


「親父そんな!!」


取り返そうとする由太郎をギリギリ頭を握力で締め付ける父。

「いるか〜〜!!」


確かに振れないバットはただのお荷物だ。


「小僧、お前か。20年ぶりに時計を直撃したってのは。
時に野球歴はどれくらいなんだ?
から名を聞くまで聞いた事もなかったが……」


「ああ、だろうな。中学までは野球なんて
かじってなかったからよ」


そういって親指を自分へと向けて
本日何度目かの怒鳴り声をあげる。


「俺は野球始めてまだ3ヶ月だ!!文句あっかコラ〜〜〜!!」


その経歴の短さに村中親子(除く)が面食らった。


「丁度いい。いつかアンタに会えたら言おうと思ってたんだ!
よーく聞けよ!!俺はこの学校きて始めてバット握った時にゃ

時計どころか校舎越えまでやったんだ!どーだオッサン覚えとけ!!」


今度の新たな新事実にはまでもが面食らってしまった。

は?そんな話私も聞いてないよ!?


「フフフ……そうか、そうか」

「お、お義父さん?」


光の逆光で顔は見えないが、楽しそうなのは良く分かる。


「グハハハッ!こいつは面白ぇ!!坊主気に入った!
男がハッタリかますときゃあそん位、いかねぇとな!!」


ドンと村中父の大きな手が猿野の肩を叩く。

メキメキと音を鳴らして辛そうだ。


「は…ハッタリなんかじゃねぇってよ……」

「お義父さん、それぐらいで勘弁してやって……」


さすがに可哀想になったは義父を止めようと
腕をパシパシ叩いて止めようとする。


「おうよ。、お前も面白いのを見つけたな!!
試合がもっと楽しみになった!!」


上機嫌で後ろを向いて去って行くのだが、
そこに猿野が待ったをかける。


「お、おいっ待てよ!次の試合までにゃもっともっと
強くなってよ!絶対テメーらぶっ倒してやるからな!!!」


猿野の怒鳴り声は、3人にもしかと届く。


「またな猿野……楽しかったぞ」

「今日見たものが全てと思うな。時は移ろい…人は変わるものぞ」

「グハハハハハハ遊人!次会う時はグラウンドでな!!」


嵐のような村中親子は、グラウンドを後にした。
















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