#09 伝説の人








蛇神のバットが折れ、2つの勝負に負けた十二支に2回戦の
勝利の余韻は消え去っている。


「さ、猿野が…バットが…」「チクショ〜駄目だったか」


十二支はバットをへし折るその豪腕に驚きを隠せない。

猿野は勝負に負けた事よりも、バットが折れて
しまった事の方がショックが大きい。

歯軋りをたて、拳を地面に打ちつける。


ちくしょう…!蛇神先輩に何て言やいいんだ……!!


無残に真っ二つに折れたバット。

時計と初めて預けられた大切なもの。

2つを同時に失ってしまった。


「そのバットに思い入れがあるのか…この通り…誠に申し訳ない」


時計を壊した由太郎と同じく膝と手を地面に付け詫びる魁。


「大丈夫か!?ゴメンなこんな風になっちまって。
で…でもこれだけは分かっておくれよ。
俺も兄ちゃんもから十二支の頑張り聞いて、さっきの試合観て、
それで2人共全力でやらなきゃヤバイ相手だって思ったんだよ」


犬飼と猿野に目配せし、由太郎は本心を打ち明ける。


「お猿君、まさか一発で折れるなんて
…蛇神先輩に謝る時は一緒に謝るよ……」


も猿野に近づいて、折れたバットを悲しげに見つめる。


もっとちゃんと私が止めてれば…ごめんなさい蛇神先輩。


兄妹3人で謝っていると、その時。


「コラ〜〜坊主共!!人様の校庭で何しとるんだ!!」


いつも聞きなれた怒鳴り声が学校中に響き渡る。

魁、由太郎、はその怒鳴り声を聞いてビクッと体を動かした。


「親父殿!」「うえっ親父もう来ちゃったの?!」「お義父さん!」


3人は同時に声のした後方を振り返る。


「よう遊人。相変わらずむさくるしいな」


ポンと監督の肩に乗せられた大きな手。


「…出たな。村中」


そこには3人の父、村中紀洋が立っていた。


「悪かったなウチの義娘がいつも世話になってる上に
今日は倅が悪さ働いたみてぇで」


決して小さくない監督でも村中父の隣では子供の
ような大きさに見えてしまう。


「なーに気にすんな。うちのガキ共にゃいい薬になったろーよ。
それには良くやってくれてるさ」


デスクワークは大体私が片付けてますもんね。
しかし周りの部員はお義父さんが現れた事に騒ぎ立てている。


「あ…あの人は伝説の大打者村中紀洋!!」
「すげぇ〜テレビで見た事あるぞ!」「サイン貰おうぜサイン!!」


十二支野球部は自分達の大先輩である村中大打者の登場に
騒ぎ立てる中、そのままずかずか3人の子供の後ろまで来て。


「うちの倅が大変失礼をした!
ほれ2人共、地に額擦り付けて詫びんだよ!!」

ゴチィッ


鉄拳が魁と由太郎に振り注ぐ。


も2人を止められなかったから同罪だ!!」

ゴンッ


「ッ!痛つぅ……」


の頭にも大きい手から生み出される鉄拳が振ってきた。

2人よりはいくらか衝撃は弱いのだが、
痛い事には全く変わりはない。


「あ゛い゛だ〜〜俺今日謝ってばっかだよ」
「今日のは一段と脳髄に響くな」
「魁兄に同じ……」


村中兄妹はくらくらする頭を押さえながら必死でその痛みに耐える。


「女のにも容赦ねーのNa……」

すこぶる小気味良い音のした拳骨に冷や汗を垂らす虎鉄。


ちゃんが強くなる訳が分かった気がするばい……」

こんな怖い義父に教われば確かに強くもなるだろう。



















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