#06 伝説の陥落





ガシャアァァン


正門まで帰ってきたを待ち構えていたかの様に
聞こえてきたのは何か、大きなものが壊れる音。


「グラウンドからだ……何が起きたの?」


は嫌な不快感を胸に感じて駆け足でグラウンドへと急いだ。





代わって事件の現場、グラウンドでは。


「そ……そんな」「時計が……」


最上階にそびえ立っていた自分達の誇りは、
無残に下へと転がっていた。


部員はその事実を、受けきれずただ、
呆然とする中で一人、監督はその由太郎の力に冷や汗を垂らす。


クッ……やってくれたな村中の……
…流石は伝説の遺伝子を受け継いだガキだ。

それは怪物の子供、怪童と呼ぶに相応しい。
の確信は当たってた訳だ。




「見たか親父ィ〜〜!俺も時計にブチ当てたぞ〜〜〜〜!!!」


雄たけびを上げて喜ぶ由太郎の側では
犬飼と辰羅川が話し会いを始めていた。


「犬飼君…今の蛟竜は完璧でしたよ」


そう。先ほどの球に、なんら問題はなかった。
しかし、打たれてしまったのだ。


「蛟竜だけじゃ通用しねぇ敵が出てきたって事だ。
辰。あのノート持って来い。
何としても次の試合までにアレを完成させる」


鬼気迫る雰囲気をかもし出す犬飼。

そこに、今度は違う怒鳴り声がグラウンドに響いた。


「ユタ!!魁兄!!こんな所で何やってるの!!??」


が帰ってきたのだ。

は走って魁と由太郎の元へと急ぐ。


、やっと戻ってきたか」


魁は何の驚きもせずに重いまぶたを上げてへと声を掛ける。


「魁兄、これはどう言う事?何でユタが“物干し竿”出して
しかも時計が落下してるのよ!まさか……!?」


「そのまさかだよ。由太郎の奴が時計にぶち当てた上
その衝撃で時計を撃墜しやがった」


監督がと魁の談話に入ってきた。


はそれを聞いて時計のあった最上階のてっぺんを見る。
そこにはいつも見慣れた3時3分は存在しなかった。
その代わり、下ではガラスの破片が飛び散っているのが見て取れた。



「時計を!?何やってるのよユタ!!

私だってまだ達成してないのに壊しちゃうなんて!!」


問題は自分が達成出来ていない事なのか?


「だって、だって悪いじゃんよ〜。
伝説破った奴の事もあんなスゲー球の事も隠しててさ」


ふて腐れながら由太郎はに愚痴る。


「たとえ義兄弟でも試合する相手校に情報流す訳ないでしょ!!
私だって十二支に黒撰の情報一切話してないんだから!!」


そうやって由太郎とが言い合いをしていると
落ちた時計に部員達が集まっていた。


「ひぇ〜〜見事にイッたな」「バラバラになっちまった」
「…ああ…学校のシンボルが…」


時計を失った焦燥感。

凪が落ちてしまった時計を悲しそうに持ち上げる。

その様子に心が痛んだ猿野は、元凶の由太郎へと迫った。


「おうコラ!そこの新鮮組ども、テメーら人ん家の
家宝をブッ壊しやがって!!クソガキは家で
大人しく全国の駅名覚えてりゃいいんだよ!!」


「ご、ごごごめんよ〜〜俺時計まで壊す気まではなかったんだよう」

「貴校のシンボルを破壊してしまった事深くお詫び致す」


由太郎と魁がそれぞれ詫びる。

そして、魁に無理やり土下座させられる由太郎。


「確かにそれは本当に謝るしかないけど、
全国の駅名覚える必要は何処にもないよ」


も謝りはするが、ツッコミは忘れない。


「大体、十二支の時計挑戦はしないでって
言ってあったじゃない。もうお猿君が打ち込んで
かなり損傷激しいからこうなったのは自明の理だよ」


ため息と共に呆れてしまう



あれほど入学当初では執着していたはずの時計がなくなった事は
思いの他に打撃を与えはしなかった。

の中で、何か区切りを見つけたためかもしれないし、
由太郎が時計の伝説を破る事はずっと前から想定していたから
かもしれない。

それに時計、伝説への執拗な執着はある意味
これからの十二支の成長の妨げにもなりかねない懸念があったから、
義父の村中紀洋で始まり、子の由太郎で終わった幕引きは
それなりに潔いものであったとすら感じてしまう。



「いくらでもゴメンですまされねーぞ!
あの時計は国宝に指定されて時価数億は下らねぇんだよ!!」


「んな訳あるか!!
時計は新しいの付けるようお義父さん
に頼んでおくよ。親子揃って壊しちゃったしね」


それだけで、怒ってる訳じゃないのは分かってるけどね。

お猿君は自分が誇れる大事な1つを失った。

今は騒がないとその感情に飲み込まれてしまうと
無意識に感じ取っているのかもしれない。


彼には、これが一番良い事かもしれない。
















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