#03  村中兄弟






時はすこし過去に遡る。

昼食を食べ終え、十二支へと帰ってきた野球部員達。


「は〜〜帰ってきたな。やっぱり十二支が一番だわ。
今日はこのまま夜まで練習だ。各自用意しろ」


「「「「ハイ!!」」」」」」


監督の指示に良い返事を返す部員たち。

言われた通りに用意をしていると。


「グラウンドに誰かいるぞ!!」

「他校のやつ等か!?」


周りが自分達の事でざわつく中でも平然としている十二支の
ユニフォームではない浅葱色のそれを着ている2人組。


1人は逆立ちした金髪の長髪で、幼い顔立ちの男。

1人は赤褐色の髪にハチマキを巻いて前髪を上げている大柄の男。

それに子津が共にいた。


「あ、おっかえり〜〜やっと帰ってきたよ」

「失礼仕る」


その大柄の男の背中には誠の1文字。

羊谷が気付いたように微笑する。


あの誠の文字。そうか……遂に来たか。

伝説の遺伝子を継ぐ者が。


「おい子津!何じゃいそこにいるダンダラ野郎共は!!」


猿野がいの一番に前に進み出て突っ掛かっていく。


「あ……この人達はさっき球場で会って…十二支をどうしても
見に行きたいってんでお連れしたんすよ」


今までの経緯を簡単に説明する子津はどこかこれで良かったの
だろうかと不安な気持ちをしているようだ。


「ホント、子津君って話通りに親切なんだもん。助かったよ〜〜。
十二支も結構近かったから歩きで来れたしな」


由太郎は逆立ちを続けたまま話を肯定する。


話通り?

その言葉に何人か頭を捻らせた。


「近いだと!?馬鹿言え!ここから球場までゆうに20〜30Kmあんだぞ!!


そんな話、信じられるかと猿野は反論する。

猿野の言い分には誰しも首を縦に振る。20〜30kmなんて
かなりの距離である。


「そうなんだ。逆立ちで行くのに丁度いい位の
距離だと思ったんだけどさ」


きょとんとする由太郎に猿野はある単語に驚いた。


「逆立ち!?」


普通は逆立ちで2.30Km歩く人間はいないだろう。

というよりか無理だ。


「そ、そうなんす猿野君!この人ここまでずーーっと
逆立ちで歩いて来たんすよ!!」


息切れがまだ続く子津は見た光景を肯定する。

それは自分で目に見ないと信じられないものであった。


「へっへー。こんなのちょろいちょろい」


まだまだ平気と逆立ちを続けている。

汗は垂らしているが、それでも余力があるのは明白だ。


「よお、2人共元気そうじゃねぇか」


監督が2人に近づいて軽く声をかけた。


「あっ羊のおっちゃんだ!」


監督の姿をみて、逆立ちを止めて立った由太郎。

その時点で部員達はこの謎の2人と監督が知り合いで
あるという情報を手に入れた。


「監督!お知り合いなのですか!?」


辰羅川が代表するようにその自分たちの考えを
確信にするために監督に答えを求める。


「久しぶりだな。中学以来か?兄貴の方はでかくなったな。
どうだ親父は相変わらずか?」


辰羅川の質問に返答を返さずに話を続ける監督。


「うんまーね。おっちゃんも監督姿だんでぃーじゃんよ」


ぱんぱんと手に付いた埃を払う由太郎。


「…で?オメーら兄弟が以外でここに来たって事は
お目当てはアレか?」


指し示さなくても通じる代名詞。


「いかにも」

「さすがおっちゃんだな。がいるといっつも
止められちゃうからさ」


止めていたのはやはりまだ大きすぎる強敵を十二支に
合わせたくなかったのだろうか。


華武や7Bよりもずっとその強さを知る黒撰高校の姿を。

黒撰ならば華武と7Bを破る事も可能だとも思っていたから。


「ちょっと監督!何親しげにしてんすか!?」

「そいつ等何者なんすか!?」

「それに何での名前が出てくるんですか!?」

部員は訳が分からないと説明を求める。


「こいつらはなぁ、次当たる黒撰高校の野球部の者だ。
20年前ここ、十二支で伝説おっ立てた村中の倅。
兄で黒撰のエースピッチャー魁と4番をはる由太郎。
そして、いや、村中の兄貴2人だよ」


「何ですって!?」

の兄貴!?」

「そう言えば…2人の兄がいて、蛇神先輩とスバガキに
似てる
って言ってたな」


そんな雰囲気を二人から感じもしないでもない。


「確かに表現としては的を射っていますね」


驚きを隠せない部員達は、自然と伝説の象徴である時計へと目を移す。

20前の黄金期に惹かれて入った部員は数知れず。

当時のまま止まった時計は十二支高校の誇りでもある。




時は流れる。


時は不変ではない。


時は、動きを止められない。
















NEXT