#02 お見舞い
「え!?先輩達はもう明日にでも退院できるんですか?」
病室に入って、2回戦の結果報告も済ませ、
先輩達の容態の話題へと変換されていた。
はお見舞いの品の1つであるりんごの皮むきをしていた
手を止めて2人にいつもより大きく開かれた目を向ける。
「ああ、ここでずっと休んでいる訳にはいかないからね」
ベットから起き上がってもう異常はないと手を持ち上げる牛尾。
本人の言う通りもう随分良くなっているようだ。
「我等も3回戦に向けて精進せねばならぬ」
蛇神もベットから起き上がり、ティーカップに口をつける。
何度見ても奇妙な光景だ。
「ええ。3回戦は強敵です。今までの2校とは
レベルがまったく違いますから」
は剥き終わったりんごを皿の上に乗せて2人に差し出した。
「君はその高校に詳しいのかい?」
良く知っている素振りをみせるに牛尾は剥かれたりんごに
手を伸ばしながら当然の疑問を投げかけた。
「もちろんです。なんたって次の相手校である黒撰高校は
私の義父が監督で、2人の義兄がエースピッチャー
と4番を背負っていますから」
「何!?ということは…次の試合の監督は」
牛尾は蛇神の言葉を引き継いでその名を呼ぶ。
「村中紀洋大打者!?」
蛇神、牛尾共に目を見開いてを見る。
「はい。義父もそうですが、長男の魁のピッチング、
次男の由太郎の長打力は私以上です。おそらく2人が十二支の
伝説に挑戦したとすれば、時計に穴が増える自信があります」
は淡々とそれでいて確信に満ちた口調で事実を告げていく。
「本音を言うと、黒撰の方が勝率はずっと高いです。
今までの特訓に無茶をしたものが多かったのは私が黒撰の力を
視野に入れて考えていたからです」
特に1年に力を入れたのは爆発力が強い人材が多かったから。
次の試合でも勝利するためのキーになるのお猿君・犬君
・辰君・子津君の4人。
「これから1週間は今までとは比べものにならないくらいの
特訓が待っているでしょう」
監督の事だから、その位の考えはすでにまとまっているはずだ。
今の状態で試合に臨もうなんて馬鹿でも考えない。
「それじゃ、私はこれで失礼しますね」
皿の上のりんごもきれいに消えて満足すると
は伝える事は伝えきったっとイスから立ち上がる。
「君……平気かい?」
牛尾は、表情を変えずに話すがまた重荷を
背負っているのではないかと心配になった。
「……大丈夫です。彼等は、純粋に十二支と戦える事を喜んでくれますよ」
もう、野球部に入った時点で決意は出来ているから……。
心配ないと告げるは、華やかな躍動感すら感じさせる
生き生きとした笑顔だった。
「……ならば我等も死ぬ気で頑張らなければならないな」
が大丈夫だとすぐに気がついて蛇神はつられて笑い返す。
「頑張りましょう。一生心に残るような試合にするために」
はそれだけ言い残して、病室のドアを閉めた。
彼等を信じる。
それが私が出来る事。
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