#12 2回戦




十二支高校からバスに乗り込み、試合会場の大宮球場へと到着した。


十二支野球部一行は、その周りを余す所なく群がるミーハー少女達の
数に驚きを隠さずにはいられなかった。



「キャ〜〜明嬢頑張って〜〜!!!」「紫SHIKIBU愛してる〜〜!!」



「……耳が痛い」


黄色い声援は球場に入っても強まるばかり。

そして、女同士の醜い小競り合いがあちこちで多発している。

犬飼キュンと地獄の底まで追っかけ隊と紫SHIKIBU
の親衛隊のが特に良く聞こえる。


犬君も大変だなぁ。


大きな声で自分を話題にされている犬飼には同情せざる得ない。


、本当に今日は他のマネをベンチに入れなくていいのか?」


監督はお前1人で本当にいいのかと尋ねる。


「今日は、ベンチは危険ですからね。まだ応援席の方がいいでしょう」


今日は武軍とは違う意味で危険だ。
こういうファンはキレると何をしでかすかなんてわからないんだから。


視察の時に述べた様に芸能界も知らない世界ではないはその辺をしっかり考えていた。


「チャラチャラしッてんじゃねー。こういう雰囲気は居心地悪ィぜ」

「ああいう手合いは実力で黙らせるのだ」


獅子川、鹿目もこの状態にうんざりの様子。


「やれやれ、犬飼君の追っかけも舌を巻く大軍勢ですね…」

「キンキンうるせぇ……」


辰羅川、犬飼も同様。


「9割方野球などさして興味ないミーハーファンでしょうが……」


そこで辰羅川が変態丸出しの格好をした猿野に気が付き、またメガネを割った。


「皆さんこんにちは〜“猿野天国インテジブル”で〜

「はい終了!!!」


これ以上被害が拡大する前にとは早めの段階
で猿野の稲妻(人体急所)へと上段蹴りを入れ、静かにさせる。


「グフウゥ!!!」


モロにくらって倒れる猿野を素早く片付けるように
ベンチへと引きずり込んだ。

「明嬢の件、全然懲りてないんだから困っちゃうわ。
これ以上十二支の評価を下げないでよ。下手したら
進路決定を目前にした3年生に多大な迷惑がかかるんだから」


これは謝るだけじゃ済まされない事だと分かっていない
からしているのだろう。知りながらやっている
のだったら更に辛い拷問部のお仕置きが待っている。



そこに放送が入った。



『これより紫SHIKIBUのデビューイベントに入ります』


チャンチャ〜チャランチャッチャラ♪♪

音楽と共に現れた紫SHIKIBUはローラースケートに短パン、長ハチマキ。

時代錯誤もいい所の格好だよ。

しかも、外野3人がとても可哀想な扱いだ。


私とは反対に感情をヒートアップさせる紫SHIKIBUのファン達。

人目考えずに悶えきってますよ。思春期の恥じらいは何処へ消えた?

歌も終盤にかかり、最後の決めポーズを終える
とリーダーの雛壇の挨拶が入る。


『今日は皆熱い中ボク達のデビューライブに駆けつけてくれて
サンキューソーマッチ。今日の試合、黒蝶との再対決に
君達に勝利報告できる様頑張りますので応援ヨロシクメカドックv』


勝利をまったく疑わない。

それも大事な事だが、それに甘えて現実から目を
反らしたり、曇らせたりするのは大間違いだ。


「もう勝った気でいるなんて…気が早いとスポーツでも芸能界でも
生き残れない事知らないのかな?」


堂々と勝利宣言されたにも関わらず、も十二支も心中平穏
に試合の準備を終らせている。


『さて、ここで今回のもう1人の役者、十二支を代表して
黒蝶にインタビューをしたいと思います』


私!!??


急に心中を乱された、それでもインタビューしようとアナウンサー
のお姉さんは近づいてきてマイクを私の目の前に持ってきた。


『黒蝶さん一言どうぞ!!』


諦めて、目線をまっすぐ前に向け、ベンチから腰を上げる

ゆっくり、平然と歩いてマイクを手に取り、グラウンドへと立った。


深呼吸を1つ。



『私から言える事は1つ。あなた達は何か勘違いしてる。

今日は紫SHIKIBUのデビューイベントでも私が黒蝶を復活させる日でもない。

今日の試合は

十二支復活の片鱗を見せる為の試合だ。

球場をアイドルのライブ会場と勘違いし、昨日は私を打ち取れなかった
明嬢が十二支に勝つのは無理だよ』



明嬢の勝利宣言に対抗し明嬢の敗北宣言をする。


アウェーとすら呼べるこの場に、臆することなく自分のチームの勝ちを
信じる心を曲げない事を背筋をピンと張り、堂々とした出で立ちで答える
は、あれ程五月蝿かったファンを黙らせてしまった。

誰かに作られたカリスマではない。自身を隠さないからこそ光るそれ。

黒蝶の名はレオハルトの名前の七光でない。

それをここで自分で証明してしまった。



マイクをアナウンサーへと返還して、再びベンチに座り直す。


「さて、皆。私の宣言を覆させないでね」


返答は分かっているのに押しを入れる


「とりあえず、当たり前だ」
「キャプテンと蛇神先輩にまた勝利報告するんだからね!」
「こんな五月蝿い空気を凍りつかせてやるのだ」
「俺のアウトローを全国のお茶の間に見せてやッるぜ!」
「明嬢のデビューイベントぶっ壊してやらあ!!」


ほら、やる気満々。私が何かしなくても、こいつらは平気だよ。

世間の評価を覆してやれ!!この舞台は明嬢の為ではなく、
十二支の晴れ舞台だ!!


















NEXT