#33 1番のお礼
辰羅川の忠告を聞いて、蛇神のベットの脇に立った猿野。
「蛇神先輩このバット…あん時預かったまま行っちまいましたから、
実は、ちょ〜っと使わせてもらっちゃったり
したんですけど…背中に手が届くというか…」
猿野は使った事を怒られはしないかと、ビクビクしながら必死で弁論する。
使うたかそのバットを…やはりこの者は…。
「持っておくが良い」
蛇神は思いがけない台詞を猿野へと向けた。
「はっ!?」
「お主の言う通りこのバットは、尺が異なる何かの役に立つ事もあろう。
バットは置物ではない。野球で使われるがその業也。
我の居ぬ間は手入れを怠らぬよう申したであろう」
蛇神がかすかに微笑んでいた。
「いいんすか・・・やった〜!」
「お猿君、そんなに嬉しい事なの?」
確かに普通のバットでないのは明らかだが諸手を上げて喜ぶ猿野に疑問は残る。
「このバットめっちゃ年季入ってそうだし、早速!
骨董品屋さんでお宝鑑定してもらお〜っと」
猿野は大切そうにバットを握る。
「てめぇいい加減にしねぇと天誅喰らうZo!!」
虎鉄は罰あたりなと言った風だ。
その様子を笑いながら見た後、は意を決し、牛尾、蛇神
の目の前で頭を下げる。
「牛尾先輩、まだ起きていないのに試合に
行ってしまって、申し訳ありませんでした。
それにアンダーシャツまで破っちゃって…」
先程からその事が気がかりだった。
元々、付き添いでここに来たのにその仕事を最後に放ってしまって。
牛尾先輩は怒りはしないだろうが、やはり、心にしこりが残る。
「君、そんな事気にしなくていいんだよ。
僕達は君に本当に感謝しているんだから。
君の応急処置が早くて的確だったから、
僕等の最後の夏は消えずに済んだんだよ。有難う」
牛尾はそれを見抜いたようにへ自分の感謝を伝える。
「我も殿には感謝している也。これからも頼んだぞ」
「我々も、坊ちゃまを助けていただいて、本当に感謝しています。
先ほどのお電話でも旦那様と奥様も是非お礼がしたいと…」
ニルギリもに丁寧に頭を下げる。
「お、お礼なんていいですから!!」
はニルギリの言葉に慌てて、断りをいれる。
「だったら、早く退院して復帰してくれるのが1番嬉しいです。
それで、今度は皆全員で勝利を喜びましょう」
それが、私が望む事だから。
「有無。その期待に答えられる様、早く元に戻らなくてはな」
「僕等も、それを早く体験したいね」
牛尾・蛇神両名だけでなく病室にいる全員が笑顔を浮かべる。
勝利できた達成感もあるが先ほどまで必死に動いていたが
安心して笑う姿を見れたことが本当に嬉しい。
この笑顔を絶やしたくない。
全員の心中にその思いがあった。
そして、面会を次々に終らせ、皆は帰宅した。
次の試合に備えるために。
今度は、フルメンバーであの感動を分かち合う為に。
NEXT