#23 仇討ち
正座させられた猿野と犬飼。羊谷は、腕を組んで見下ろしていた。
「テメーら今、さしずめこう考えてんだろ。
"何で被害者はこっちなのに、殴られなきゃいけねーんだ"
"何で向こうにはペコペコ頭下げてんだ。みっともねぇ"とかな」
二人は何も言えない。
「まあ、オレだって元々気の長い方じゃねぇ。でもな。
お前らが、たった一度目の戦いの勝利も敗北も知る事無く
散っていくというのは、あまりに忍びねぇじゃねえか」
その様子を、他の部員は緊張の面持ちで見ているしかなかった。
「オレがここに立っているのは、お前らと何ら変わらん。
十二支の一員だからだ。そしてオレの役目は、
何としてでも十二支を試合に勝たせる事だ」
すでに、武軍の用意は出来ている。
「今の状況は分かるか? 回は6回。蛇神と牛尾、チームの要を欠き、
鹿目も魔球Xを使えぬ程に消耗している。現在2−5。後半にして3点差だ。
オレは今からこの状況を覆す采配を振るわねばならん」
羊谷が、左手を二人に向けた。
「今を持って謹慎を解除する。
猿野・犬飼・辰羅川。
お前らが流れを持って来い!!」
さすがに驚く三人。口が唖然として開いてしまっている。
「さっきのので効いただろうから、それでチャラにしてやる。
その有り余った血の気は野球で発散して来い。再三言うが、
オレは十二支の為に動いている。
次に何かやらかした時は、その場で除名するからな」
頷いて、二人が立ち上がった。
そこには、覚悟を決めた者の姿を見せていた。
お前等、の残したチャンスを無駄にすんじゃねーぞ。
加西の時と酷似するこの状況。
俺達の中で1番、お前等と同じ行動がしたかったのは、あいつだ。
あいつは、それを耐えただけでなく、同じ気持ちの2人を止めた。
どれ程………自分の感情を押し込めたのか……
あの臆病で我侭娘が………本当に強くなったな。
まったく、子供っつーもんはいつの間にかに成長するな。
…こっちが年をとったことを実感させられる程に。
司さん。沙耶。お前さん達の娘はこんなにも立派になったよ…。
物思いの言葉を上にいる大切だった二人へと送る。
きっと、あの二人が最も気にしているのは最愛の1人娘の事だろうから。
羊谷はベンチに戻ってタバコを取り出して、火をつける。
さぁ、ここからが巻き返し地点だ。
「うちの勝利の女神に涙流させた事、後悔させてやれ」
「み…見ろ!」「あれは!?」
十二支サイドにさわめきが広がる。
『十二支高校選手の交代です』
「待ってろや武軍。カニみてーにアブク吹かせてやらぁ」
「やつ等はオレが黙らせてやる」
「な…何ですって?!さっき乱闘しかけた当の2人を!?」
「謹慎がとけたのか天国!?」「監督がついに勝負に出たぞ!!」
「面白くなってきた〜〜この試合まだわかんねぇぞ!」
犬飼がグラウンドに落ちている牛尾のチョーカーを拾い、身に付けた。
蛇神先輩・主将・……。
あんた等の忠告聞けなくて悪かった。
今度は…俺があいつ等を野球でぶっ飛ばす。
あんた等の代わりに、俺がここで全力を出し切る。
だから、。次に顔を見るときは…笑ってくれ。
あの…綺麗で暖かい笑顔で……。
『5番鹿目くんの代打として、5番サード猿野くん』
蛇神さん、このバット使わせてもらいます。
「オレが2人の無念、全て晴らしてみせますよ」
もう、に悲しい涙は流させねぇ。
さぁ、本当の舞台はこれからだ。
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