#20 さらなる悲劇……









「皆、そんなに悲観的になる事はないよ」


牛尾が励ますように皆に笑いかけた。


「あげんこつされた後ぜ…そりゃヘコむくさ」

「牛尾さんもいい加減、何とも思わねーんすKa?あいつら」


 少し、暗い顔で頷くキャプテン。


「君達の気持ちも分かるけど…でも、

野球は元々ある程度、危険性を伴うスポーツだよ。

今回のようなイレギュラーな事態が2・3あっても、

そう珍しい事じゃないんだ」


 頷いた私の肩に、ポンと手を載せると、皆を見渡した。


「野球の神様は、いつだって僕らを見ている。

最後まで諦めずに頑張った者に、味方をしてくれる」


 自分の手を首の十字架に寄せて、言葉を続ける。


「もしも、僕らの心の中で雨が降ると思い続けたら、

本当に雨が降り出してしまうものなんだ」


『6回表 十二支高校の攻撃です』


 バットを握る彼の目には、迷いも戸惑いもない。


「大丈夫。まだ土砂降りにはなっていないよ。今は6回だ。

これから、いくらでも晴れはやって来る」

『4番 ライト・牛尾くん』


「牛尾先輩…」

「さ、皆顔を上げて」


 柔らかく微笑むと。


「綺麗な虹を見る為には、少しの雨宿りは付き物じゃないか」


 皆に笑顔が戻り始めた。


「へッ、言うじゃねぇか…」


「雨なんてオレらのバットでカラッとふっ飛ばしちまいましょーYa!!」


「さすが主将っすね。皆の暗かったムードをガラリと変えたっすよ」



 ああ、やっぱりこうでないと十二支な感じしないや。



でも…牛尾先輩、土砂降りになる前に、

小雨の中で、走りきることも必要なときが在るんですよ。







「おお、聞こえてくるわぁ。いかにも青臭いセリフが」


「紅印、耳良いネ。朕、全然無理ヨ〜」


 呆れ顔の、紅印が返す。


「……想像つくだけよ、ワンタン」


 剣菱がのんびりとした顔で笑った。


「そうかな〜?いいじゃん。俺、こーゆー熱いの、

びみょ〜〜に好きだけどな〜」


「甘い男もキライじゃないけどぉ、それだけじゃ満足できなくてよ」


 少々不満げに顔に手をやる紅印。


「彼には足りないのよ…勝利に喰らいついてく"牙"がね」


 牛尾がバッターボックスに立った。


「あと2ヶ月以内に、全国4163校もの参加校は泡と消えていくのよ。

現実を見つめて欲しいわ。人の夢は、はかないものなのよ」


 ピッチャーが構える。


「なぜかって?ほら、言うじゃない。"はかない"って…」


投げられた。その球道に驚愕する牛尾。球は…。




「"人"の"夢"と書いて、"儚い"って言うのよ」



ドゴオォォ



牛尾のヘルメットを…直撃した。





その衝撃で割れたヘルメットの欠片が、光を反射させながら宙を舞う。






倒れ伏す牛尾の横に、割れたそれが転がる。





再び、十二支の時間が止まった。


















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